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きっと、星のせいじゃない。のcopywriterのレビュー・感想・評価

4.2
最初は、ヘーゼルがシニカルに世の中を眺めてて、こちらもすこし距離を置いて見ていたのだけれど、ガスと出会った瞬間から、画面から生きるよろこびがあふれはじめて、そうそう恋愛映画はこうでなくっちゃと。

だが、あの作家が出てきたあたりから少しずつ毛色が変わって。ああ、この映画は、たしかに恋愛映画だけれども、それ以上に「大いなる痛み」とやらに向き合う人たちのためにつくられた作品なのだなあ。単なる難病ものとのクサビは、あのアル中親父が打ってくれた気がした。

印象的だったのは、アンネの部屋のシーン。アンネとヘーゼル、悲惨な境遇は共通することだけれど、戦時下で夢想せざる負えなかったアンネと、横たわる美しいものに気づかずに夢想ばかりしているヘーゼル。息を切らしながらも階段をのぼり、ヘーゼルが真実にたどりつくその過程と、その後のキスシーンへのなだれ込みは、本当にロマンチックすぎる瞬間で。かすかな希望だとか結末だとかに意味を求めて生きるよりも、ガスがいて、家族がいて、世界があることのかけがえのなさ。もっともっと大切なものに気づけてよかった。

全編、悲しさより、さわやかさが勝っていたのは、その語り口の軽妙さ以上に、人より短いスパンのなかで、生のよろこびを全力でまっとうしていたからだと思う。同情や死の悲しみよりも、生のよろこびが大部分なのだ、この映画は。だから、あったかい気持ちになる。ぼくは男のクセして恋愛映画が好きなのだけれど、その理由のひとつが「生きててよかった」感が描かれやすいからで。そんな意味でも、この映画には、儚さの中で輝く本当に尊いものを見せてもらった気がする。
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