Otun

新宿スワンのOtunのレビュー・感想・評価

新宿スワン(2015年製作の映画)
3.0
男性諸君に訊きたい。あなたは自衛隊キャバクラを知ってますか?
私は、ええ、知っています。

数年前。後輩と飲み歩きながら、夜の繁華街をうろついていると、やれ『かわいい娘いますよ』とか、『おっぱいおっぱい。おっぱい如何ですか?』、『ヌキヌキ。ヌキいけマスよ』などと、全くけしからん呼び込みの数々。

何を。今夜は後輩と久しぶりの再会を果たした大切な夜。
そんないかがわしい場所で時間を潰すつもりはない。そもそも、私達の顔を見てみろ。助平な顔をしとるか?しとらん。凛々しい柴犬の様に凛としとるやろがい。
私達は、次々に声を掛けてくる呼び込み達を無視して足を進めた。

すると、一人の男が近づき、私達にキラキラとこう言いました。
『自衛隊キャバクラはいかがすか?』。

ん。じえいたい、きゃばくら?
不思議と後輩と私は同時に足が止まった。
訊くと、自衛隊をモティーフにしたキャバレークラブだと言う。しかも、何やら時間帯によっては『ミッション』なるものがあるらしく、やれ『ほふく前進ミッション』『隊列ミッション』など、うら若き女子達が舞い、演じると言う。
はぁ、なるほどなるほど。

私は後輩に言いました。
『最近は、テロなどで治安のあり方などが見直されなければならない時代。ここは一つ、国の自衛について考えるいい機会なのではないか?もちろん下心はない』。
すると、後輩。
『先輩。私もその様に考えておりました。百聞は一見にしかず。賛成であります。もちろん下心はない』。

私達は、呼び込みの男に連れられキャンキャンと犬の様に店に入った。キャンキャン。



二時間ほど経った。
私達は店の外で夜空を眺めていた。何となくお察し頂いていると思うが、私達は、ぼったくられた。
信じられないほど、ぼったくられた。
ペンペン草も生えないほど。ケツの毛までむしり取られたと感じたのは後にも先にもあの日だけだ。『あぁ、今、これがケツの毛までむしり取られた状態かぁ』、なんて事を思った。
『ミッション』なんて、なかった。入店して一時間ほどしてひたすら酒ばかりかっくらう女子に、ねえねえいつになったらミッションやんの?と聞いたら反対にえ?ミッション?なんすかそれと質問返しされた。なるほどなるほど。
その日。後輩と私は、そのまま上を向いて帰りました。

男性諸君。これが私の知る、自衛隊キャバクラです。出来れば東京の繁華街の呼び込みにはついていかないほうがいいヨ。

と、新宿の夜が舞台の映画を観ると、いつもこの事を思い出す。レビューではない。
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