イチロヲ

瘋癲老人日記のイチロヲのレビュー・感想・評価

瘋癲老人日記(1962年製作の映画)
4.0
隠居生活に入った老病者(山村聰)が、長男の嫁(若尾文子)の健やかな肉体美に、生きる活力を見いだしていく。足フェチ界の帝王こと谷崎潤一郎の同名小説を映像化している、エロティック・ドラマ。筆者は原作を読了済み。

本作では、老人の一人称で語られている原作を、会話劇主体の劇映画へと脚色している。老化にともなう身体障害の描写が最小限度に抑えられているため、老人が置かれている境遇を汲み取ることが、若干ながら難しくなっている。

だが、終局に近づくに連れて、「老いの恐怖とは無縁の若い女性」に活力を見いだすことの意義が見えてくる。足フェチの爺さんにとって、女性の健脚に触れる行為こそが、薬以上の延命措置だということを暗示させている。

若尾文子の素足の形が、原作で解説されているモノとは不一致のような気がするけれども、それは読み手のイマジネーションによるものなので、映画の評価とは無関係。原作から映画へのコンバートには大満足。
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