TAK44マグナム

グリーン・インフェルノのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

グリーン・インフェルノ(2013年製作の映画)
4.0
バイヤー!!!

残酷ホラーのマエストロとして名高いイーライ・ロスが、「人を食べるから野蛮」という決めつけた考えに敢然とNO!を突き付けたモンド映画の頂である「食人族」に、全身全霊でオマージュを捧げまくった未開の猟奇エンターテイメント!!

基本的には「食人族」同様、野蛮なのは文明人の方であるというスタンスであり、そこから一歩進めて、文明人のおごりに釘を刺しています。
主人公たち社会活動家のメンバーは、アノニマスのようにマスクをつけて未開地を守るアクションを起しますが、そんなものは無責任な偽善でしかないと断罪、文明人の身勝手な思いなど何の力にもならない未開地のルールの中で、次々とメンバーはヤハ族によって食されてゆくのです。
それが自然の摂理であるが故に。

ジャングルの開発に対する抗議活動が成功したメンバーたちは飛行機が墜落、文明の手が未だ届いていないヤハ族のテリトリーに取り残されてしまいます。
ヤハ族に捕らえられた7人は家畜の檻に閉じ込められ、手始めに脂がのっていそうなちょいデブさんが「調理」されちゃいます。目ん玉はくり抜かれ、四肢も首もトントントーンと手際よく切断、残った胴体は燻製にと、ほとんどビストロスマップのように楽しく調理される様子が淡々と流れ続けるシュールさ!
仲間が食べられるのを目撃してしまってパニック状態のメンバーたち。
でも、ほらそこは家畜の檻だから。隣でブヒブヒいっているブタさんたちと何ら変わらないのです、ヤハ族にとっては。
ブタや牛の立場にたってみれば、仲間たちが次から次へと「肉」に加工されてゆくのを見て、「おれの親友を食べやがって」とか「わたしの彼を食べないで~」と怒ったり、懇願していたりするかもしれません。
人間も食べられる側に回れば、たんなる家畜なのです。
ヤハ族の少年が主人公と「交流」をもつことに成功するのも、少年からしてみれば家畜に少しばかり愛着がわいただけであり、そんなことは文明社会の畜産農家でもよくある情景。
牛丼やすき焼きの具として存在する牛に、子供がついつい愛着がわいて「お父ちゃん、ギュータローをころちゃないで~」などとワガママを言って親を困らすのと同じでしょう。
文明人にとってカニバリズムがモラルに反する行為なだけであって、食人が習慣であるヤハ族にとっては至って普通の行為なのです。
(まったくの余談ですが、カニバリズム(食人行為)に関して、関よしみ先生のホラーコミックに、「父親と遭難した息子が父親を食べて生き延び、人肉で無ければ何も食べられなくなってしまい、母親が自分を調理して食べさせる」という内容のものがありまして大変興味深かったです)
喰られるのが御免ならば、彼らのテリトリーに入らない事だし、もちろん、神聖なテリトリーを侵すことは野蛮な行為に違いありません。なので、そこに資源があろうがなかろうが、未開地は未開のままで放っておくのが正解でしょう。
それでも文明人は、ズカズカと自然を侵してゆかなければ存続できない存在なんですけどね。

そんなわけで、文明人を気取ったおバカな自称活動家の連中は、勝手な理屈で助けようとした相手に「神の恵み」として食べられるといった運命を辿るのでした。素晴らしいですね。

しかし、鑑賞した印象としては、思いのほかモンド(いかがわしさ)成分が少なく、非常にまじめな劇映画だなと感じました。
イーライ・ロス一流のユーモアにも溢れており、ゲラゲラと笑える場面もたくさんあるのですが、多くの猟奇ホラーが行過ぎた人体破壊描写や斬新すぎる殺害方法などに思わず笑ってしまうに、本作はそういった部分では意外と笑えませんでした。
直接的な残酷描写をバッチリみせてくれる割に、「食人族」と比べてライトに感じるのは何故なんだろう?と、しばし考えた結果、やはり、キワモノ的ないかがわしさが足りないという結論に。
これはあくまでも個人的な感覚なので、人によっては蟻さん拷問刑とかでも充分に笑えるのかもしれませんが、イーライ・ロスが大真面目に食人ホラーをリスペクト、更に気合いをいれてテーマ性を押し出しすぎてしまったからか、まるで「高尚な社会派ホラー」の様相を呈してしまったかのような違和感を感じてしまったのです。
「食人族」と違ってエロも無いし。
処女作の「キャビンフィーバー」のような低俗ホラーを勝手に期待してしまったのがいけなかったのか?
勿論、そういった下品で馬鹿なテイストも盛り込まれてはいるのですが(オネエチャンがウンコするところとか)、全体的にどうにも座りが悪いというか、むず痒い思いをしながら鑑賞していた次第。
エピローグに関しても、色々と狙ってやっているのもわかるのですが、いまひとつ外しているような気がしちゃいました。
もっと、シンプル且つパンチ力のあるオチでも良かったのではないか。
最初の、ちょいデブさん解体ショーをピークに、残酷度が尻すぼみになってゆくのも若干、気になりましたね。

それでも、やはりそこは天下のイーライ・ロスです。
映画未踏の地であるジャングルの奥地でのタフな撮影は称賛に価するし、過酷さを超えてもたらされたハイエンドに高画質な、緑一色のジャングルとヤハ族の赤く染めた肌のクリスマスのようなコントラストが強烈に美しい。
そんな大自然の中で繰り広げられる神聖なるカニバリズムを、ここまで魅惑的なショーとして魅せてくれるのはイーライ・ロスだけかもしれません。
つまり何が言いたいかっていうと、さすがは奥さんのオッパイも躊躇なくさらけ出せる男、イーライ・ロス!って事で、結果イーライ~!!


P.S
横並びでfilmarksメンバーの皆さんと鑑賞するグリーンインフェルノは、普段ひとりでの鑑賞とはまた一味違った素敵な体験でした。


劇場にて