垂直落下式サミング

ウォークラフトの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ウォークラフト(2016年製作の映画)
4.0
『月に囚われた男』『ミッション8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズ監督が、『ロードオブザリング』で間に合っているような題材を撮っていた。
生真面目な映画を撮る人という印象だったのでちゃんとアクションできているのか心配だったが、これが意外にも無邪気に楽しめる。
精密な架空史劇というよりは、『ベンハー』を源流とする『タイタンの戦い』『コナンザグレート』『スリーハンドレッド』などの胸踊る筋肉戦記の系譜に位置付けられる本作。パワー系映画にフレッシュさを盛り込むために、本来なら悪役のイメージが強いオーク族を群像劇のメインに据えたことは、題材に対するアプローチとして正しい視点であると思う。
エロゲ脳なので、オークなんてものは捕虜にした姫騎士様のくっ殺フェイスを引き出したのちに人外の凌辱を加えて屈服させるのがアイディンティティだと思っていたが(ひどい文章)、どうやらその心の内側に部族の誇りや伝統を重んじる気骨ある精神など熱いものを秘めているらしい。
故郷を失ったオーク族たちの後に引けない悲しさ、世界を守ってきたという偉大な魔法使いの消耗、その場では最善かに思われた選択がさらなる悲劇を生んでしまう皮肉、破滅的なストーリーが好み。
あるかどうかもわからない後編に最終的な結末をぶん投げるスタイルは評価の別れるところではあるし、個人的にはそういうの嫌いだ。でも終盤の総力戦までは派手な見せ場を取っておく堅実な構成や、戦いの背景となるファンタジーの架空世界のなかに大河のような長い歴史を感じさせる語り口など、その手際の良さは光るものがあったと思う。
世界観の作り込みは漫画的で、予算の問題なのか少し背景から浮いているシーンもあるが、ピージャクの再現性やデルトロの変態的なこだわり様と比べるのは酷というもの。このレジェンダリーピクチャーズの無邪気さに寄りかかっていたい。