とりん

ウォークラフトのとりんのレビュー・感想・評価

ウォークラフト(2016年製作の映画)
3.9
2020年33本目

「月に囚われた男」、「ミッション: 8ミニッツ」のダンカン・ジョーンズ監督が世界的人気作品であると同名ゲーム作品を実写映画化。
ゲーム自体は名前は聴いたことあるものの、内容は全く知らず。
監督は好きだけど、こういうファンタジーはどうも消化不良になりがちなので、期待値は低めで観たが、ファンタジー映画好きの私としては個人的にかなり楽しめた。

話の内容的には人間対オークという種族間の戦いであり、ファンタジーのアクション作品としてはかなりありがちな内容。
注目すべきは人間、オークどちらともの視点を描いていること。
オークといえば知能指数が低く、低俗で汚くやたら群れるようなマイナスイメージが強いけれど、本作のオークは誇り高き戦士のような種族であった。
そのためこれまでオークに抱いたことのない熱い感情を感じた。

オークたちは故郷を失い人間界に攻め込むも、誇りまで捨てたいわけではなく、自分たちの誇りを、同族たちを守るためには、内部から変えていかなければという気持ちを持つものもいた。
その主導となる氏族長のデュタロンには、家族を同族を守るという熱い思いがより強い方であり、裏切り行為かもしれないが、人間と手を組んででもという悪を討つという姿勢には感化された。

人間も観たことのないオークに対し、苦戦を強いられるが、ただ闇雲に戦うだけでなく、相手の話を聞き、共に悪を討つといった考えを持つことに至る。

人間、オークどちらのドラマも描いているが薄いといえばどちらも薄いかもしれない。
人間たちの種族間でも話し合いの場などはあるが、メインとなるアゼロス国だけで、他については全く描かれない。
ただ壮大な世界観と設定を、120分程度でまとめるストーリーとしては結構うまくまとめれていたと思う。
元々ゲームを原作としているので設定はかなり凝っているし、ゲームならではの魔法使いの立ち位置や戦士、ゴーレムも出てくるし、馬や狼、グリフォンといった動物などもたくさん登場。
また武器としても剣メインで、ファンタジー作品としては珍しい弓ではなく銃が使われていたのは変わっていたと言える。
ちょっと魔法使いがチートすぎる圧倒的強さなのはいかがなものかと思ったが、魔法使いがたくさん出てくるわけではないので、それは良いかなと。

人間界を守る魔法使いである守護者が、悪に染まって行く様や、 孤独であるといった感情を出すところも良かっただろう。

しかし続編ありきとも思える終わり方は少し気になったけれど。最初から何部作とうたっていればそういう終わり方でも良かったのだが。

映像はかなり素晴らしく、壮大な世界観をしっかり描ききっていた。
ドラマ性の強いSF作品を描いてきたダンカン・ジョーンズがファンタジー作品をどう描くか気になっていたが、うまくまとめれていたのではないか。
魔法がSFアクションよりな表現をしていたりと、これまでのファンタジー作品とは少し魅せ方が違う部分があって、新鮮だった。

ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)と比較している人が多いが、さすがに比べるのはナンセンスかと。
ほとんどのファンタジー作品が指輪物語の壮大な世界観や設定から影響を受けていると言っても過言ではないわけで、その原作をうまく表現したのが実写映画のロード・オブ・ザ・リングである。
劣化版と叩かれるのはお門違いな気がするし、そんなこと言い出したらファンタジー作品すべて叩くことになり兼ねない気がする。
とりん

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