昨日に続けてトミー•リー•ジョーンズの監督•脚本•主演作品です。
これも渋い。ジャケ写が西部劇っぽいけど、こちらはアメリカ開拓史の闇を鋭く描いている歴史劇であり、心の変化を表現したヒューマンドラマ。
タイトル『ホームズマン』とは送り届け役のこと。実際にそういう仕事(システム的)が存在していた。
アメリカ開拓期のネブラスカ準州の小さな集落。そこでは過酷な状況に耐えかねて精神を病んだ3人の女性を東部アイオワ州の教会へ送り届けるホームズマンが必要だった。
それに立候補したのが30歳を超えた独身女性で、農作業も馬の扱いもこなす敬虔なメアリー(ヒラリー•スワンク)だった。メアリーは都会出身で教養もあるが、男からすると威張りすぎるとかブサイクとかの理由でオールドミス。しかし心優しく逞しく、善行を積む目的もあっての立候補だった。
女一人で400マイルの旅路を馬車に3人乗せては大変なこと。そんな道中、勝手に他人の空き家に住み着いたため、縛り首になる状態のアウトローのブリッグス(ジョーンズ)を助けて助手として雇う。メアリーは男手が必要、ブリッグスは単に金目当て。それだけの関係だが、数日間を共にする中、ひもじく厳しい寒さの中、様々な出来事が起きて、ある晩メアリーはブリッグスに身体を求めるのだが...
ここまでしか書けないが、ブリッグスはアイオワ州の教会まで辿り着き、司祭夫人(メリル•ストリープ)に3人を引き渡す。夫人は慈悲深い笑顔の中にも、若干心の中で嘲笑するような微妙な表情を見せるのだった。
旅が終わる時、ブリッグスの心の中には大きな変化がある。東部の資本主義アメリカを知ったのち、アイルランド系出身なのか?アイリッシュ風の歌とダンスを踊り銃をぶっ放して、心が変化してこそまた西部へ戻るのだった。
ん〜深い。2/3ほどはヒラリー•スワンクが主役。当時の西部の女は結婚して男の子を産むだけの家政婦でしかないが、オールドミスは生きる場所がない、一人では生きられないと言わんばかり。その感情の演技が上手いです惹き込まれます。
他にもキャストは演技派を揃えている。
精神を病んだそれぞれは、女の子しか産めないシオライン(ミランダ•オットー)、その原因の夫(ウィリアム•フィクナー)、凶暴で暴れるグロー(ソニア•リヒター)、その夫(デヴィッド•デンシック)人形を離せない若妻アラベラ(グレイス•ガマー:メリル•ストリープの次女)、その夫(ジェシー•プレモンス)
村の牧師(ジョン•リスゴー)、東部のホテルの経営者(ジェームズ•スペイダー)、その従業員(ヘイリー•スタインフェルド)ほか
出演シーンはそれぞれ少ないながらも皆が印象を残す演技が秀逸。
ジョーンズはクリント•イーストウッドよりも西部に拘るらしい。それゆえ西部の風景が素晴らしい。
撮影は『ブロークバック•マウンテン』のロドリゴ•プリエト。
景色が絵画のようで息を呑むほどに美しかった。
歴史を知れた、これも観て良かった。