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ホームズマン/ミッション・ワイルドのmのレビュー・感想・評価

4.8
酷い邦題とパッケージを付けられてしまった、静謐で格調高いトミー・リー・ジョーンズ監督・主演作品。2014年のカンヌ映画祭コンペ部門で上映された時から気になっていて、ようやく普通に観られるようになった。

邦題やパッケージから来る勇ましい西部劇のような印象とは全く異なり、この作品には田舎町を蹂躙する悪党や胸のすくような銃撃戦といった西部劇らしい要素は一切無い。
ヒラリー・スワンク扮する主人公と老いた無法者のトミー・リー・ジョーンズの二人は、気の触れた三人の女性達を寂れた田舎町から彼女達を保護してくれる教会まで送り届ける為に共に旅をする。

三人の子供を疫病で一度に亡くした女、夫に『子供を産む機械』として酷い扱いを受けた女、そして子供を殺した女。心が壊れた三人の女性達それぞれの哀しみが、西部劇らしからぬ細やかな描写で、短い中に的確に描かれている。
そして彼女達を送り届けるヒラリー・スワンクの背景もまた細やかに描かれる。農家で独り身で生きる女性の、魂の気丈さと頑なさ、その裏にある今にも崩れそうな脆さと哀しみをヒラリーが見事に体現する。

そんな彼女達の心情を、台詞に頼らず芝居や映像表現でしかと描き出す監督のストーリーテリングの手腕も見事だった。
役者としてのトミー・リーの良さも存分に発揮されていて、女性達の哀しみを受け取る老いた男の哀愁を彼もまた見事に体現していた。


日本のキャッチコピーのような冒険譚になる事もなく、この映画は静かに淡々と進んで行く。西部劇ではなくフェミニズムのロードムービーなんだなと思って観ていると、映画は思わぬ展開を迎える。久しぶりに強い衝撃を受けた。その後の一筋縄では行かない顛末や結末も含めて、監督の独特の人生観・死生観が色濃く反映された苦味のある作品だった。しばらく胸の内で飲み込む事に時間がかかりそうだ。

女性達への厳しさと優しさのある現代的な視点に心惹かれた。



「沈黙」「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」「アルゴ」「ラスト、コーション」といった名作群を手がけてきた名撮影監督ロドリゴ・プリエトの撮影も、荒野の雄大さと人間の哀しいちっぽけな心をつぶさに捉えていて見事。




ヒラリー・スワンク、トミー・リー・ジョーンズだけでなく、メリル・ストリープやヘイリー・スタインフィールドも顔を出す小品らしからぬ豪華キャスト。特にヘイリーには少し心救われた。