夏bot

ラブ&マーシー 終わらないメロディーの夏botのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ミュージシャンとして音楽性や音楽家像といった面においてブライアン・ウィルソンに少なからず影響を受けている身として率直にいうと、この映画を伝記映画として観たとき、必ずしも優れた作品であるとはいえないと思う。なにぶん作中で描かれるタイムスパンが長すぎるためフォーカスがぼやける瞬間があるし、多くの登場人物(特に60年代パートにおいて)が説明や描写による掘り下げのないまま現れては消えたりする(ヴァン・ダイク・パークスがあんなにあっさりイン/アウトしちゃいかんだろう……)。なので「ブライアンを深く知りたい!」という方より、どちらかといえば「自分の知っている/思い描いているブライアンが動くのを見たい!」という方に向けられた作品ではないかな、と感じた。そして後者の立場からみれば、この作品は十二分にその役割を果たしているだろう。
己の精神世界に埋没し、音楽に全神経を集中させている60年代のブライアンの描写には光るものがあった。特に実際のBB5のマルチトラックを再構築したというリバーブやエコーの利いた空間的なBGMはとても魅力的で、ブライアンの混沌とした脳内を美しく表現している。

幼少期にブライアンやBB5に大きく傾倒していたわたしにとって、この映画はブライアンに対する感情移入の強さから絶えず心を揺さぶられずにはいられない作品だった。実際、わたしははじまりから終わりまでに最低3回は泣いたし、彼が現妻と結ばれるラスト・シーンや、エンド・ロールでの表題曲の演奏を目にしたときは心の底から「よかったね……ブライアン、ほんとうによかったね……」としみじみ思った。観る人が観ればそういった効果をもたらすような力が、本作にはあるだろう。しかし、その効果が最も強く表れるのは、伝記映画を期待して本作を観る層ではないはずだ。