NAO141

フューリーのNAO141のレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
4.5
『理想は平和だが歴史は残酷だ』

第二次世界大戦時、ヨーロッパ戦線を舞台に、たった1台の戦車でドイツ大軍を相手に戦い抜いた5人の兵士たちの絆を描いた作品。
監督のデヴィッド・エアーは、元海軍で潜水艦乗組員という異色の経歴。
この作品は『これが戦争である』ということをまざまざと見せつける。
「勝った・負けた」や「英雄の物語」ではなく、「戦争そのもの」を真っ向から描いた作品になっている。
兵士たちがいかに過酷な状況下で戦っていたか、日々の戦闘をやっとの思いで生き延び、疲弊し、死と隣り合わせの状況にありながらも生き抜こうとする、その極限状況に置かれた男たちを通して戦争そのものを知る、そんな作品である。

ブラッド・ピット演じる戦車長ウォーダディーがとても魅力的だが、最も重要な存在はローガン・ラーマン扮する新兵のノーマン。我々はこの何も知らない新兵を通して戦争というものを疑似体験する。ノーマンも初めは「人を撃つのは嫌だ!」という人物だが戦争というものを経験する中で敵に対して銃を向け、そして射殺しなくてはいけない状況に追い込まれていく。ノーマンの成長、いや、成長というよりも変化も見所の一つ。
戦争の残酷さを伝える作品ではあるが、
威厳を兼ね備えた父親的な存在の戦車長と、経験値ゼロで戦場での残酷な現実に悩み葛藤する新兵の親子のような関係、そして5人の兵士の絆には胸が熱くなる。物語ラスト、ノーマンはドイツ兵に見つかってしまうが、ドイツ兵はノーマンを見逃す。戦争とは残酷なものだが、残酷なものだからこそ、このシーンでは崩壊しきってない「人間性」というものを感じることが出来たような気がした。
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