このレビューはネタバレを含みます
殺らなければ殺される。
ドイツ軍の少年兵を殺せなかった信心深いノーマンは、ブラピ軍曹に"戦場は無慈悲だ"ということを教わっていく。
しかし最後、戦車の下に隠れていたノーマンは、若いSSの兵士に見つかったが、見逃された。その若いSS兵はきっと、当初のノーマンと精神的に似た兵士だったのだろう。皮肉にもそのおかげで命拾いした。
もし逆の立場だったら、戦場を学んだ最後のノーマンなら容赦なく敵を殺す方を選んでいたかもしれない。
そして生き残り、英雄となるノーマン。
残されたフューリーの周りには、大量の薬莢と無数に横たわるSS兵の死体。
一つの戦車に乗る5人のおかげでナチスの攻撃を抑えられたことが分かる。
しかし、決して嬉しそうな顔にはならないノーマン……。
で!?
っというように感じてしまうのは、まだ物足りないところがあったからだ。実話を基にしている作品にはそういうことが多い。
面白くなかったわけじゃないけど、『戦場のピアニスト』や『プライベート・ライアン』で受けたような衝撃は無かった。
途中、ドイツ人女性と食卓を囲み、敵同士と分かり合えた束の間の幸せを見せるシーンは良かった。
余談だが、調べてみると、シャイア・ラブーフはナイフで顔に傷を付けたり、歯を抜いたり、風呂に入らなかったりといった役作りをしたようだけど、そこにはナルシシズムしか感じられない。役作りを感違いしているとしか思えない。劇映画はドキュメンタリーではなく虚構なのだから、それを本物のように見せるために美術やメイクがいるわけで、例えば焼け死ぬシーンで本当に人を焼くのでは、やってられないだろう。