きんぽうげ

0.5ミリのきんぽうげのネタバレレビュー・内容・結末

0.5ミリ(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

キネ旬ベストテンの2位を取っているので、借りてみた。
典型的に現代日本の本当の姿を見させてもらった感がある。つまり、老人たちである。自分もやがてそうなるのかと思うと、うんざりもしてしまうのだけれども、逃げられない。
ヘルパーが、色々なタイプの老人たちと接し、それぞれが現実にありそうな様子を醸し出していた。最悪なパターンは、火事になり、そこの家の妻が自殺をしてしまうところ。息子は失語症に陥っている。いろいろのきっかけを得て、老人たちの家に泊まり込むことになるわけで、ヘルパー自身の生い立ちには触れておらず、それは、あまり、問題にはしていない。どこにも帰る場所がないという符号をラスト、この息子との会合で明らかにさせる。同じ立場になるのだろうかと、冥土の土産に、添い寝をするところからの火事と自殺、あまりにも悲惨すぎるが、似たような事件はごく当たり前に起きてしまっている。思うに、在宅介護であったら、可能性はなしではなかったに違いない。坂田利夫演ずる振り込め詐欺に騙されてしまう老人も後を立たない。本人は自転車泥棒を繰り返している。そこに、つけこむ。きっかけは、いつも、老人が軽い罪を犯す部分から入り込む。ところが、ヘルパーの仕事は食事がしっかりできる強みを持たせた。
坂田利夫通称アホの坂田が、素晴らしい演技をしている。こういう老人も、数多くいるだろう。1000万円貯めて、老人ホームへ入居する。おちがあって、貰った車のトランクに、100万円、プレゼントするという、粋な計らいがあった。いすゞ117クーペは名車であるらしい。
海軍に行った経験のある老人は、エロ本。万引きのところを見つかり入り込む。そこは、妻も動けぬ認知症である。津川雅彦、草笛光枝の豪華夫婦である。行くところが無いにもかかわらず、出掛ける。悲しい1日は、恐らく、誰もが経験しているだろうなと思われる。「0.5ミリ」とは、津川雅彦演ずる、元先生が読んだヘルパー宛てに捧げられた詩の中にあった。ちょっと、動くだけでも大勢がいれば、それは力になる意味合いか。
ここで反戦の言葉をしっかりと述べさせたのは、単なる老人介護だけの物語じゃないと、この国を今に持ってきたのは、彼ら達である事を、しかも、国に騙されてという事を言いたげであった。
ラストは造船所に勤めているという最初の老人の別れた夫の方、たなたま息子が店先で食べ物を盗み食いしてるのを、見かけ(これは、きっかけとして致し方ない)たまたま、知ったのだが、柄本明(別れた夫役)の息子が、ヘルパー安藤サクラの実の夫というのはお遊びであろうか。たどり着いた場所に同じ境遇の息子を見出だし、旅立つ意味は?
いずれにしろ、良くできた作品であるのは、確かで、役者もうまかった。
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