Shelby

0.5ミリのShelbyのレビュー・感想・評価

0.5ミリ(2014年製作の映画)
3.9
「うちのお爺ちゃんと、寝てあげてくれない?」
こんな映画の始まり方、今まであったであろうか。斬新すぎて目が点になってしまう始末。

ヘルパーのサワは、とある客からのこの申し出を、戸惑いながらも勤め先に内緒でなら、と受けてしまう。
その夜、布団の横で発情したお爺ちゃんと揉み合いになっている間に石油ストーブの火が燃え移り、職も住む家である寮も失ってしまう。そこから始まるサワの放浪の日々。狙い目は、誰にも話し掛けられず孤独でさみしい老人。ヘルパーでの知識を活かしてうまく色んな老人の家へ転がり込む。

安藤サクラの怪演の数々が光る。3時間18分という長い時間、最後まで見終えることが出来たのは、彼女の演技の幅広さとユーモアに富んだ会話の応酬によるものが大きい。

津川雅彦の演じる生真面目で、神経質な老人役もハマり役。不貞を働く少年のように風呂場を覗いてサワの裸体を一目見ようと廊下を彷徨く。微笑ましさすら感じる純粋な性欲。更に、認知症を患い、サワのことを記者だと勘違いをし、壊れたラジオのように戦争での体験談を繰り返す場面。
切々と目で訴えかけてくる迫真の演技。7分にも及ぶこのシーンでは、自然と涙が溢れてきた。

題名の0.5ミリとは、
「静電気が起こるくらい近い、人と人との距離感が0.5ミリ」
と安藤モモコは語る。
現代における人との関係性の構築は希薄になりつつある。そんな中で、作中ニュートラルに人との関係を縮めていけるサワの存在は、不思議と輝いてみえた。
安藤サクラの演技に見ハマる3時間だった。いい作品だったと改めて思う。
Shelby

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