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マジック・イン・ムーンライトのRのレビュー・感想・評価

4.2
最初から最後までライトなロマンティックコメディーなんやけど、かなり深いテーマを内包したとても興味深い一作だった。冒頭、中国の京劇のような格好で見事なマジックショーをして、観客を魅了する主人公のスタンリー。ある日、マジシャン仲間に頼まれます。ソフィーという名の若い霊媒師がいる、そいつのイカサマを見破ってくれ、僕には全く見破れない、彼女はある金持ち一家を騙している、と。出向いてみると、出会ってすぐ、ソフィーは内的波動が……!とか何とか言いはじめ、スタンリーが何者なのかを瞬時に見破ってしまう。両手をこめかみのあたりに添えて波動を感じてる様子がおかしくてしゃあないねんけど、演じてるのがエマストーンやからとても愛嬌がある。で、ソフィーが波動を受けたり、死者と交信したり、ロウソク浮かせたり、ついにはスタンリーの最愛の伯母の過去まで見透したり、としてるうちに、ついにスタンリーは彼女の霊能力を認めざるを得なくなる。という話。科学の合理性だけを信じて、死後の世界や宗教的世界観を退けて生きてきたスタンリーは、厭世的で悲観的で常に人生に絶望してたのだが、ソフィーを通して目に見える以上の世界が存在すると感じれるようになると、心の闇が消え、人生をワクワク楽しむようになり、世界を肯定的に見始める。その変化が見ててめちゃくちゃ面白かった。そこからさらにアレン君らしい皮肉なストーリーが二転三転してって、えええ!ってなるんやけど、一番の見どころはその世界観の変化なんじゃないかと思った。その変化が結局、硬直して便秘みたいになってた人生観の風通しをよくした。そのうえでのエンディングだよね。最終、夢か幻想でも見てるようなものすご非現実的なタッチになったのはビックリやった! ボクが思うに、科学はあくまで生命現象の表面的な一部をざっくり説明してるだけのものでしかないし、はっきり言って科学では諸々の現象が起こる根本の原因については何一つ説明できない。しかも、科学ですら、突き詰めると、人間の直感や主観というあやふやなものから生まれてて、事象を観測可能な点をもとに細分化してパターン化したものに過ぎない。科学の限界は医学の限界に似てて、お医者さんに行っても病気の原因となると何にもわからないし、表面的に症状を除去することしかできない。そんなトンネルビジョンで全宇宙の生命活動を判断するのはほんと間違ってると思う。近年では科学の立場もだいぶ変わってきて、スタンリーみたいな人はそんなにいなくなったと思うが、それでもやっぱりそっちによってる人は多いと思うし、目に見えるもの以外を信じられなくなっていくってのは、刻々と老いて死にゆく人間の悲しいサガなのかもしれない。いや、けどねぇ、目に見えるものが存在してるってこと自体、目に見えないものが存在してることの何よりの証明だと思うんだが。違いますかね。だって、おかしくね? 目に見えないものは存在していないって言うなら何で見に見えるものは存在してるの?ってなるやん? まーそれは置いといて、本作は皮肉なアレン節がしっかり効きつつも、人間のなかで起こる不思議なマジックをコミカルにテンポよく描いたバランスの良い一作だと思いました。バランスがよいが故に、逆にちょっと物足りないかも…?と思ったりもした。映像の雰囲気もいつもと全然違ってふんわりしてたし。映像はいつもの方が全然好み。あとエマストーン、目ぇデッカイしほっそいし、かなり人間離れして見えた。個人的に、スタンリーとオバちゃんの関係がかわいくて良かったなぁ☺️
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