けーはち

バクマン。のけーはちのレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
4.6
マンガ界の最高峰「週刊少年ジャンプ」でトップを目指す高校生マンガ家コンビの死闘を斬新かつ鮮烈な映像表現で描く!

★マンガ界の生存競争は非常に厳しく、デビュー作家の中でも専業で食って行けるのは0.01%と一握り。その最高峰に位置する「ジャンプ」。努力・友情・勝利のスローガンはあまりにも有名だが、マンガ家たちもまた「アンケート至上主義」という戦場で勝ち続けなければならない、マンガの主人公のようなもの。そんな容赦無い弱肉強食の荒野に、無鉄砲な高校生の少年たちが向かう!

★本作はマンガ家をテーマにしているが、同時に本作自体が古典的なジャンプバトルマンガの体裁を取っている。基本的にライバルとなる一人の天才に対抗すべく作画担当の主人公と原作担当の相方が補い合いながら立ち向かうバディものであり、そもそもの主人公の動機は父や師(的存在)への憧れと超克という、極めて男性的な感情である。また、勝利の褒賞として結婚をチラつかせてくれるヒロイン(馬の鼻先のニンジン、創作のインスピレーションをくれるミューズでもある)までいる。徹頭徹尾、古典的、血統主義的、競争主義と優勝劣敗を明確にするマッチョイズム、そして女を御褒美扱いするセクシズム満載の古いタイプのお話である。

★そんなお話の是非はさておいて、マンガ制作という実に映像向けのパフォーマンスには向いていないように思われる作業を題材にして、本作は極めて原作に忠実に、あるいはそれを超えるような「マンガ的な」面白い表現に成功している。主人公たちはマンガを描いているだけだが、その背景はいつしか白い紙になっており、そこにぞろぞろと絵が巨大化して立ち上ってくるのだ。ペンや定規、カッターを走らせる、紙をめくるなどの硬質で無機質な作業音が、サカナクションのミニマルな劇伴とピタッと合って、登場人物の動作はわずかなのに場面はグイグイと動いていく。そして、主人公たちとライバルとが巨大なペンを振り回しながらのマンガバトル(イメージ)に突入するくだりは実にエキサイティングなのだ。

★マンガへの愛がいっぱいに詰まった映像やキャラクター、画面のそこかしこに配置されたガジェットやいかにもマンガオタクっぽい部分も見え隠れする会話は、観ていて楽しい。さらにスタッフロールまでもが遊び心に富んでいて、ジャンプ黄金期を知る者には感慨もひとしおなもの。そうでなくともマンガ好きにはクスッとできたり、ドキッとする素敵な仕上がりになっている。マンガ好きには是非!