八木

バクマン。の八木のレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
4.7
見ていてまず、心を掴まれた瞬間が、山田孝之が主役の漫画家二人の漫画を読むくだり。こういう抑えた演出プランと山田孝之の演技がガチっと組み合って、2か月前から漫画に取り組み始めたことに驚くシーンに自分が褒められたような気持になってうれしくなるし、ジャンプ編集部というものが、才能ある新人を常に求めていて、その出会いは素直に喜ぶ人間が揃っていることがわかって組織に対する好感度も上がる(実際はどうかはもちろん別にして)。そこから、漫画へと情熱が傾き、上達していく流れを自然かつ見事な省略で見せていると思いました。
主役二人が、高校生でジャンプ連載にこぎつける時点で、「新妻エイジと違って俺たちは天才じゃない」というセリフは説得力を失っているはずなのに、すべて流れで見ていれば、天才じゃなさもちゃんと積み上げられていて、違和感はない。この映画には「とにかく踏み出すことの大事さ」が泥臭く、エネルギーに満ちて描かれていて、作品中で、踏み出した人間に栄光が与えられていることがとにかく心地よい。
最後の展開は取ってつけた印象が否めず、乗り越えるべき壁としては弱く見えたり、「高校生」を冠した新妻エイジの学生生活が一切描かれてないところなんかも、作品全体からするとマイナスのように見える。でも、それよりは主役二人のチーム感とひたむきさ、漫画を中心にした特殊な社会のガイドとして、原作の見事の省略の仕方、見終わった後の清涼感とジャンプ・漫画への興味の高まり、謎の創作意欲、遊び心満載のエンドロール、冷たさと熱さのある音楽などなど、『最高!』が詰まった映画だと思います。
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