YasujiOshiba

エージェント・ウルトラのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

エージェント・ウルトラ(2015年製作の映画)
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面白かった!

ジェシー・アイゼンバーグ、双極性のパニック障害なんてやらせたら、ドンピシャに決まってるじゃん。

ぼくのお気に入りは『ゾンビランド』だけど、ともかくダメ男を演らせるとピカイチだよね。ジェイソン・ボーンよりぼくは、このマイク・ハウエルのゴリラぶりが断然好きだ。洒落が効いている。

監督のニマ・ヌリザデは、イラン系のアメリカ人なのよね。父親はイラン革命のとき政治亡命したジャーナリストで、のちにロンドン大学で国際関係論の博士号をとったアリレザ・ルリザデだという。

なるほど、だからCIAの描写がこうなのかと思っちゃう。問答無用で一つの村を隔離してしまわ、有無を言わせずガンファイアーをかましてくるわ、あげくにはてにはドローンでミサイルをかまして、味方もろとも吹き飛ばしてしまえ、みたいな馬鹿さかげん。

アメリカというのは、たしかに、外から見たら、おつむの弱い暴れん坊 (Ultra) なのだろうAmerian Ultra という原題には、そういう皮肉が込められていると見た。

そして、そのみさかいのない暴力に血みどろにされてゆく弱い人間へのまなざしがこの映画の核心にある。

だからマイクは自分から武器を用意することはない。彼が銃を撃つ時は相手の銃であり、さもなければ、スプーンやシャベルや花火など、生活のなかにあるものばかり。

マイクのガールフレンドのファービー(クリステン・スチュワート)の情にほだされやすさも、CIA職員ヴィクトリア(コニー・ブリットン)の無能ぶりも、その元部下の臆病ぶりも、ようするによきアメリカ的小市民ぶりが、常にストーリーをひっくり返す。

そして最後には、アメリカンコミックのスーパーヒーローがあくまでもその荒唐無稽なコミックぶりによって、世界を席巻するというオチ。

わるくないじゃん、いやむしろ、
すごくよいと思うな。

追記:
そうかエージェント・ウルトラは、あのCIAの極秘洗脳プロジェクト「MKウルトラ計画」を含意していたわけなんだな。なるほどね。
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