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裁かれるは善人のみのtransfilmのネタバレレビュー・内容・結末

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ロシアのアンドレイ・ズビャほにゃらら監督は、いつまでも名前は覚えられないけれど、「父、帰る」は何度も繰り返し観たオールタイムベスト入りで好きな作品です。
トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督や、イランの「別離」の監督と並んで、次の時代の巨匠になりそうな監督なんじゃないかな。と思う。(後は密かにイタリアのパオロ・ソレンティーノ監督もそういう人かなと思ってます。)

なので、この映画は絶対観ようと思っていました。

観終わった後の感想としては、、この映画、かなり難しいと思った。
特に、息子と母親の感情を読み取るのがすごく難しいと感じた。
観てる最中も、観終わった後も色々考えたけど、あんまりつかみどころがなく・・なのでこれから自分が書く感想は的外れかもしれません。

この映画は、色んな意味にとれる作品だと感じた。
他の方のレビューにも書かれていますけど、「神の存在も、宗教も教会も形骸化してる」という風にもとらえられた。
以下は、自分自身の解釈です。

●息子と母親の関係
息子が母親に対してまったく愛情を抱いていない。
ひょっとしたらそれが一番の理由で、この母親も
なんとなく自己嫌悪になっていて、それで
「家庭の中におさまっていたくない。」という風に考えている女性なのかな?と思った。
この映画を途中まで観ていて疑問に感じていたのは、
なんで息子と母親がこんな関係になってしまったのか。
この母親が、息子のことを最初から「望んでもいない子供扱い」していて、だからこの息子はここまで母親を嫌っているのか。
あるいは、息子が小言を言う母親を一方的に毛嫌いしはじめたのか。。というところでした。
個人的には、この映画を最後まで観ると、どんな理由かは知らないけど息子のほうから母親を毛嫌いし始めたんじゃないかな。と思った。この母親は、昔は旦那に対して愛情を抱いていたようですしね(携帯のムービー)。

●息子はエディプスコンプレックス?
お前は母親なんかじゃない・・山猿はお前だ。などと
冷酷な言葉を浴びせつつ、
母親が浮気する現場や父親と母親の現場を目撃するたびに
酷く傷ついている様子だったのは、なんとなく矛盾しているので。

●母親の浮気と浮気発覚後の様子
これもこの映画を観た限りだと定かではないような気もしたけど、なんとなくこの母親から浮気を始めたように思う。
ただ、浮気相手に惹かれていたからか。というとそういうわけじゃないと思う。
なんでこの母親は浮気したか?・・というと正直あんましよくわからないです。
息子から愛されてなく、旦那はそのことを問題視もしていない家庭に嫌気がさしていて、退屈な人生から逃げたかったんでしょうか?
でも、浮気後にもっと酷い自己嫌悪に陥っている様子や、浮気相手に対する態度、浮気相手の性格を考えると、
ほとんど、"つい魔がさした"というレベルではないかなと思う。なんとなくこの母親の"つい魔がさした"という行動は、この映画のタイトル"リヴァイアサン"が意味するものにもつながってるのかな?と思う。

●市長について
この市長は、最初はわかりやすすぎるくらい悪役なんですけど、最後の最後で一気に印象が変わりました。
この人は、主人公たちの家族にとっては本当に悪者だったんだろうけど、たぶん主人公以上に家庭的な人なんだろうなと思う。一部を観れば悪だが、すべてを観るとグレーな人なんだろうなと思う。
ちなみに、最後の教会のシーンで「神様はすべて観ているんだよ」と言って子供の頭にキスするシーンがとても印象的だった。このシーンを観て、すくなくともこの市長はそんなに強い罪悪感を抱いてないんだろうなと感じた。
この市長は、たぶん脅しや不正を行うことは仕事の一環くらいにしか考えていなく、そして過去に人を殺害するような決定的な悪事はしていないんじゃないかと思う。

●主人公?の男について
印象的だったのは、「もうなにもわからない」といって号泣するシーン。この人は、自分は悪徳市長につかまった不幸な被害者であるはずで、ただ自分の身にかかった火の粉を振り払うためにがんばっていただけなのに、なぜこうも自分が苦しめられなければならないのか・・と考えていると思う。
この人は、非のない善人だったか?というと、決してそうではないと思う。
個人的には、この人の一番の問題は、本当に振り払うべき火の粉がなにかわかっていなかったことだと思う。
たしかに、先祖から引き継いだ土地も大切かもしれない。けど本当に振り払うべき火の粉だったのは、息子と母親の関係だったのではないかなと思う。

●母親はだれが殺したか?
自分は、息子だと思う。
この父親も、自供して罪をかぶったのは息子が殺した可能性が高いと思っていたからだと思う。
この映画のポスターにもなっている、息子が海岸にある骨の前で座って号泣するシーン。。
この息子が母親の殺害を決意したのは、このときなんじゃないかなと思う。
たぶん、この息子の母親に対する殺意も、
"魔がさした"というレベルのものではないかなと思う。
なので、きっと、この息子は死ぬまで後悔し続けるんじゃないかな。

・・というのが自分の感想でした。

※追記(独り言)
※母親の死に市長が絡んでる説について
この映画を観てると、それも考えられそうな説で、しかもそういう風にとらえられそうなシーンももろに出てくるんですけど、ラストの教会での市長の表情&言動と、
父親が容疑者で捕まった後の息子の行動&言動から、
自分は息子が一番疑わしいと思いました。
この息子は、「番号がわからない」といって誰にも連絡をせず、ずっと一人で家に閉じこもっていて、
自分が同じ立場だったら、父親が犯人でないことを主張するためにもっと行動するか大人に助けを求めるかすると思う。(「父親が犯人なわけない!」って息子も言っていますし)。
でも特に行動せず、誰にも連絡せず
ずっと一人で家にいるのは。。。。
というところが、なにより一番疑わしいところでした。

あと、この一家は引っ越しの準備を始めてたし、市長は土地を手に入れるために追い打ちをかける必要はなかったと思う。
土地を手に入れるためではなく、市長が恨みを晴らすためにやる可能性はあるけど、そうだとしたら、ラストの教会で市長は自分の息子にあんなこといえるのかな。
うーん。。という感じでした。