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裁かれるは善人のみのKSatのネタバレレビュー・内容・結末

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ひとことでいうなら、恐ロシア。これしかない。

一杯目も二杯目もウォッカなロシア人。こんなステレオタイプな描写がそのまんま出てくるところからも判るように、これはロシアによる、ロシアについての映画なのだ。
同じズビャギンツェフ監督の「父、帰る」では、普遍的な父性を描くためにロシアらしい大自然を扱ったようだが、本作はむしろ、ロシアそのものの縮図として、自然「しかない」ロシアのド田舎を扱っているように思われた。ほら、市長の後ろでは、「あの人」が微笑んでいる...。

予想以上にわかりやすい内容の映画だが、描かれている内容は底知れず深く、壮大だ。
見事なまでに「善人」な主人公たちと「悪役」な市長。「悪役」には当然、隠しきれぬほどのおびただしい罪があるが、主人公たち「善人」にも、不倫や憤怒、堕落などの罪がある。果たして神はどちらを裁くのか。
前半はそんな噺だ。

しかし、後半になり、物語は一気にヨブ記のような様相を呈してくる。終始、同じヨブ記を下敷きにした「シリアスマン」のコーエン兄弟のようなブラックな笑いを孕みつつ展開された挙句、最後には政治と教会の癒着という闇深いテーマに行き着く。しかし、そんな教会の鐘も、大自然の中では聴こえやしないのだ。本当に恐ろしい映画だった。

しかし、ロシア人は本当にあんなウォッカばかり呑むのか?息子が友達たちと教会の廃墟で焚火をする、というシチュエーションなど、本当にあるのだろうか?何より、あの大自然。
ああ、ロシアって、コワい。
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