ゆみゆみ

裁かれるは善人のみのゆみゆみのレビュー・感想・評価

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
3.7
ロシアは恐ろしいな。なんて不条理な世界。そしてなんて理不尽な世界なんだ。

ロシアの海辺の町。コーリャ(アレクセイ・セレブリァコフ)は祖父の代からすみ続けた土地で、再婚相手のリリア(エレナ・リャドワ)と前妻との子ロマの三人で暮らしていた。そしてその土地を市長のヴァディム(ロマン・マディアノフ)に破格の値段で買収されようとしていた。
コーリャは友人の弁護士ディーマ(ウラディミール・ヴドヴィチェンコフ)をモスクワから呼び寄せ、裁判を起こすが…。

海辺のコーリャの家のリビングが素晴らしく素敵だった。横長のキッチンの前面と側面の全ての壁が白い枠の窓で、そこから海辺の景色が広がり、明るい昼の光が差し込む。ほんと私好みのため息モノのリビングだ。

それに比べて不釣り合いなストーリーの厳しさは違和感というよりも悲しくなってくる。

原題は「レビヤタン」。「旧約聖書」のヨブ記に出てくる巨大な海獣の名前。そして鯨の意味も。
そして「リヴァイアサン」とは哲学者ホッブズの著書名であり、教会権力から解放された国家を指すらしい。ふむふむ。

そして邦題の「裁かれるは善人のみ」とは私なりの解釈では、裁きとは道理にかなっているかどうかを神によって判断されることであり、判断される価値は善人にしかない、という意味かなと。
懺悔できるのは善人の証。


**ちょっとネタバレ**





主要な登場人物のほとんどが善人ではない、と思った。リリアとディーマも、もちろんヴァディムも、そしてコーリャさえ。

ヴァディムなんか、あまりの外道振りに途中ほんと腹が立って、神の天罰が落ちろ!!その橋崩れろ!!!って願ったが何も起こらなかった。
そういうことなのかなと。

リリアの死の真相は、どっちなのか私の予測としてもハッキリしない。
人が信仰を持つのは、自分が弱いからだ。信仰を本当の意味で必要としないコーリャはリバイアサンだ。
そしてヴァディムもまた。ラストの神父の説教もヴァディムには全く響かない。

海辺の家をショベルカーが無残に壊していく。理想や愛や温かい心の崩壊のようだった。そして浜辺に打ち上げられた鯨の骨はコーリャでありヴァディムなのだ。
ゆみゆみ

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