Moomin

裁かれるは善人のみのMoominのレビュー・感想・評価

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
5.0
自分の感受性の問題なのか、これを観て病みそうになった
物語自体の救いのなさ、計算し尽くされた広大な自然の映像美、映画の中に没入すればするほど現実とかけ離れていく感覚がただただ苦しくなった

物語は、代々引き継がれてきた海辺に家を持つ主人公コーリャ(自動車修理工)、若い妻のリリア、亡き妻との間に生まれたロマ、三人でその家に暮らしていた。そこに権力に溺れる市長が、立ち退きを命ずる、その土地の欲しさに
コーリャは友人の弁護士と共に、悪徳な市長に立ち向かう この土地は渡さないと


一際輝いたモンタージュは、ロマ(息子)が浜辺で一人泣くシーンだろう あそこでのクジラの骨はただ置いてあるだけでも監督の技法の高さがわかる

物語や1つ1つ丁寧な演出、広大な自然のロケーションはとてつもなく素晴らしい 間違いなく映画館で観るべき作品 それとワンショットでの長回しが生きるのは圧倒的な演技の実力(主人公サイドも脇役も敵役とされる市長の人達も)加えて登場人物の性格の表現も上手く引き出す(主にキレ症だがどこか弱さのある主人公。間違いなく悪者の市長など)
講師の方の解説も聞いたが 見返せば見返すほど洗練されたショットが目立つ。アンドレイ・ズビャギンツェフ…演出の天才だと思う

登場人物と同じく病んでいくにつれ、度々登場する40度のウォッカを自分も飲みたくなる もうお酒に溺れたい…
最近はドキュメンタリー映画ばかり観ていて、没入とかではなく一歩引いた演出目線で作品を観ていたが、久々のフィクションの没入感はたまらない。
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