すずき

マップ・トゥ・ザ・スターズのすずきのレビュー・感想・評価

3.7
ロサンゼルス・ハリウッドにやってきた、火傷のあるちょっとイカれた女の子、アガサ。
彼女は有名子役ベンジーの昔住んでいた場所を訪れる。
ベンジーは、子役として重宝されているが、実はドラッグ依存症に苦しんでいる。
彼は病院で死んだ女の子の幻覚を度々と見るようになっていた。
ベンジーの父親はセレブ御用達のセラピストで、彼はハリウッドの情報通でもあった。
彼の患者である女優・ハヴァナは、死んだ母親に虐待を受けていて、今そのトラウマに苦しめられていた。
彼女は現在、かつて母の出演した映画の、リメイク版に主演する事を所望している。
そんなハヴァナは、偶然知り合ったアガサを身の回りの世話役として雇うのだが…

クローネンバーグ監督の、ハリウッドを舞台にした群像劇。
タイトルから、宇宙を旅するSFロードムービーかと勝手に思ってたけど、映画スターの自宅地図(ハリウッドで販売されている)の意味だったのね。

クローネンバーグ監督と言えば、グロテスクな肉体破壊描写だけど、本作にはそういったゴア描写はほぼ無し。
しかし、ハリウッドセレブ達の内面の醜さや下品な悪趣味、人間の業を描いた、別の意味でグロテスクだ。
一般ウケはしないだろうけど、俺は好きだよ、と言いたくなる作品。

大女優ハヴァナ演じる大女優ジュリアン・ムーアの体当たり演技が素晴らしく、カンヌ女優賞を受賞している。
しかし、私はミア・ワシコウスカの演じるアガサのキャラクターが印象的だった。
アガサはそんなに美人でもないけれど、何故か目で追ってしまう、アンバランスな怪しげな魅力ある危険な少女。
そういや、ベンジーも子供っぽさと大人っぽさの均衡が崩れた、アンバランスな子だったなぁ。
彼ら子供達への救済とも破滅とも言える結末に、上手く言えないけど美しさを感じた。