ともやすずき

あの日の声を探してのともやすずきのレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
4.0
フランス映画としてアカデミー賞を賑わせた近年の名作『アーティスト』の監督ミシェル・アザナヴィシウスが、ブレッド・ジンネマンのアメリカ映画『山河遥かなり』を物語から着想を得た本作は、舞台を第二次世界対戦から第二次チェチェン紛争に置き換えて制作された。どの時代でも、どの国でも、戦争、紛争は起きていてるが、90年代にはルワンダ内線、ボスニア内線、クロアチア紛争、ユーゴスラビア紛争など、様々な戦争が各地で勃発していた中でチェチェン紛争もまた悲惨な道を進んだ紛争のひとつだ。第一次、第二次併せて延べ20万人以上の民間人の尊い命が亡くなった。きっかけはソ連崩壊後に独立を図ろうとしたチェチェン共和国との対立の元で紛争が起きている。ソ連崩壊は国家存続を危惧され、それを立ち直すためにチェチェンへと対テロ対策として軍隊を派遣。それが第一次。第二次は単なる武力勢力による非人道的無差別攻撃が行われ、特に民間人が標的にされた。そもそもなぜソ連が戦争を仕掛けたのか、多くの要因がある中で挙げられるのが、崩壊後の経済状況への立て直しと、石油パイプラインの確保。すなわちソ連側の勝手な判断で、罪のないチェチェン共和国の人々が命を落としたのだ。そんな戦争をテーマに、目の前で両親を殺され、兄弟とも離れ離れになった、9歳の少年の体験は想像絶する出来事だろう。失語症に陥った少年、その少年を支えるEU職員の女性を軸に、弟を探すお姉さん、孤児院を経営するNPO団体であろう女性、戦争の経験もしたこともない極普通の青年が、戦場に駆り出され、殺戮マシーンへと成り下がるまでの姿を単調に、そしてセミドキュメンタリー風に取り上げたアザナヴィシウス監督は手腕だ。感情的にならず、お涙頂戴のような演出もなく、けれども心に突き刺さる何かがある。それは同情であったり、憤りであったり、葛藤であったりするわけだが、観るもの何か考え、突きつけるモノがある。