キッチー

あの日の声を探してのキッチーのレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
4.2
1999年チェチェン、両親を殺され、赤ん坊の弟を抱えて逃げる9才の男の子ハジ、ロシア連邦ペーリヤ市で自由に生活していたのに素行不良で警察に捕まり強制的に軍隊に入れられた19才のロシア人男性コーリャ。

ショックから言葉を話せなくなったハジが痛々しい。彼を救うのがEU人権委員会から派遣されている女性キャロル(ベレニス・ベジョ)。彼女から受ける愛情で、彼の心も氷解していく。声を失った彼が彼女に伝えたかった気持ち...それが判った時は、ちょっとうるっとしました。

一方のコーリャですが、普通の若者なのに軍隊で苛められ、次第に人間性を失っていくのが、悲しくなります。

二人を追いながら、戦争によって心にも傷を負っていく人々を映し出していくところ、良かったです。ただ、ラストはあまり、すっきりした感じがしなかったのは、このラストシーンでは何も解決しないからなのかもしれませんね。

チェチェン紛争って、ロシアがチェチェンに侵攻して独立を抑え、テロによる報復もあり、泥沼化していた印象でしたが、この映画を見たら紛争というより、完全に戦争ですね。誤って殺される民間人、民間人の中にもテロリストが紛れているかもという疑心暗鬼、行為が正当化されていく...
戦争の恐ろしさを感じました。

ハジ役のアブドゥル・カリム・マムツィエフ君のおどおどした悲しげな表情...演技上手でした。チェチェンダンスを踊るシーンも良かったです。コーリャ役のマクシム・エメリヤフも最初と最後で顔付きが全然違い、凄いと思いました。


監督は映画「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウス。
キッチー

キッチー