アキラナウェイ

サンドラの週末のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

サンドラの週末(2014年製作の映画)
3.9
「少年と自転車」「ある子供」に続いて、ダルデンヌ兄弟の監督作を開拓中。

プロットはいつだってシンプル。
単純さの中に、強いメッセージが詰まっている。

金曜日。
体調を崩し、休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は会社から解雇を告げられる。解雇を免れる方法は、週明けの月曜日に「ボーナスを貰い、彼女を解雇する」か、「ボーナスを諦め、彼女を復職させるか」の二択を同僚16人に無記名投票で問い、過半数が彼女の復職を希望する事。夫に励まされながら、サンドラは週末の二日間、同僚達にボーナスを諦めてもらう様説得しに回る。

なんてエゲツないんだ…。

目の前にぶら下げられたボーナスか、悲痛な表情で自分に投票して欲しいと懇願するサンドラか。

性善説に立てば、皆んながサンドラの為にボーナスを諦める美しき世界。性悪説に立てば、皆んながボーナスを貰い、彼女には職場を去ってもらう無情の世界。

それぞれお金には困窮していて、彼女に謝りながらボーナスは諦められないという者もいれば、泣いて彼女を推すという者もいる。

気を抜けば涙が溢れ、無気力になり、物乞いの様に同僚の家を訪ね歩く事を嫌がるサンドラ。安定剤の服用回数が増えていく…。

サラッと描いているけど、テーマは重い。
目の前に迫る解雇という闇。
サンドラと夫も2人の子供を抱え、ここで職を失う訳にはいかないのだ。

いつもの華やかなマリオン・コティヤールは何処へやら。不穏な表情、不安定な心情を確かな演技で魅せる。

貧しさが貧しさを訪ね歩く。

ただの週末の二日間なのに。
この二日間の重圧は彼女には重過ぎる。
ただの週末の二日間なのに。
日常に潜む生き辛さを一本の映画に仕上げる監督の力に脱帽。

泣いてばかりいたサンドラが、最後に見せた表情。そこに少し生きる希望が宿っている事に、小さな感動を覚える。