スイッチ1:おかえし
仕事で飛行機に乗り込んだモデルの女性。
隣席の男性は、偶然にも音楽家だった元彼を批評した評論家で…。
スイッチ2:おもてなし
雨の夜ダイナーを訪れた客は、そこで働くウェイトレスの父を自殺に追い込んだ高利貸しで…。
スイッチ3:エンスト
田舎道を気持ちよく新車で飛ばす男性。
地元のクルマとトラブルになって…。
スイッチ4:ヒーローになるために
クルマをレッカー移動された事で仕事と妻子を失った男は…。
スイッチ5:愚息
裕福な男性の息子がひき逃げ事故を起こし、人を死なせてしまった。
父親は、その隠蔽工作を顧問弁護士に依頼するが…。
スイッチ6:HAPPY WEDDING
幸せな結婚披露宴の最中、招待客の中に花婿の浮気相手がいる事を知った花嫁は…。
スペインの名匠ペドロ・アルモドバルがプロデューサーを務めたブラックコメディ。
本国アルゼンチンでは『アナと雪の女王』に2倍以上の差をつける400万人超を動員して、歴代興行収入第1位を記録したというこの作品は、怒りの沸点がぶち切れてしまった人々を描くオムニバス映画です。
『人生スイッチ』という邦題だと、なんとなくいい感じの話が中心になりそうじゃないですか。
「やる気スイッチ」みたいに、ここぞという所で押す(決断する、勇気を出す)ことで、ダメだった人生が好転するみたいな。
ところがこの映画は、ほとんどが核ミサイルのボタンだったという感じで、基本的には感情(怒りや欲望)に身をまかせた結果、滅茶苦茶になるという話ばかりなのです。
私たちはみんな常識人で、不愉快な事があってもガマンして生きてる。
つまり、「感情爆発スイッチ」を切っている。
でも、もしそのスイッチがONになったらどーなる?
そのど~なる、というのを実際に見せてくれてるのがこの映画です。
普通の人ならせいぜい妄想の世界でしかできないことを、この物語の登場人物たちはスイッチ入ってやってしまいます。
なんとなく『世にも奇妙な物語』を騒々しく強烈にした感じの話。
6話のオムニバスからなる映画で、形態自体は珍しくないが、どれもエゲつなくドン引き必至なエピソードが積み重なる。
まず、これコメディじゃないと思う。
笑わせようとしているようなシーンはないし、実際まったく笑えなかった。
それぐらい不幸でエグいエピソードばっかりです。
どのエピソードもブラックで予測不能ながら丁寧に共感可能なように描かれていて、すばらしい。
オチをつけるということがどれだけ難しいかかみしめている分、終わらせ方の巧みさと新しさに思わず声を上げる。
だが、好きなエピソードもあるんだけど、映画全体としてはまぁまぁかな、といった印象でした。
別に面白くないわけじゃないけど、どのエピソードも最初から怒りや不満を我慢せずに発散しちゃってるのがちょっとね。
どれもこれも元をただせば自業自得でヤリすぎなものばかりで、理解できる側面もあるが正当化するには少々無理を感じる…というのが本音。
大人がワーワーギャーギャー喚いてることにストレスを感じてしまう(特にホラー映画では)性質なので、常にそんなことをやってるこの映画はちょっとストレス溜まる映画でした。
最後に怒りが爆発すような作りならけっこう好きなんですけどね…。
痛快に感じるか、単に不快に感じるか。
怒りでブチキレた人間、醜い人間の姿を楽しめるか。
好き嫌い分かれると思う。
非常に大人向けの過激な人生集ですが、やさぐれている時に観るには最適かもしれません。
これが『アナ雪』を越えたというアルゼンチンの方たちの感覚がすごいと思いました。