84歳にしてクリント・イーストウッドのキャリア最高の興収を叩き出した本作。
とはいえイーストウッドが単なる娯楽として監督作を提供するわけがない。
イラク戦線で160人を殺したとされる狙撃手クリス・カイル。
彼がいかにして戦線を乗り越えたのか。
そして160人を殺したとされるその真意と葛藤とは。
現実戦争が起きている情勢に対して、こういった映画があることには運命のようなものを感じる。
敵兵を殺すことに理由づけをしなければ人間は行動に移せない。
分かっていながらも苦悩するのが人間であり、そこに理性と本能によって区切りをつける。
狙撃シーンの緊張感は並大抵でないし、カイルが子供に対して狙いをつけるとこなど、従来のハリウッドの常識は全く通用しない。
反戦映画の様相を呈しているが、こういう戦争映画で個人を使い悲劇を説くという試みは目新しい。
ブラッドリー・クーパーの熱演も含めて、今見る映画だと思うし、大いに考えさせる中身になっている。