アンタレス

アメリカン・スナイパーのアンタレスのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.7
冒頭、鋭い眼光でスコープを睨むクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。その視線の先には、母親と子供。アメリカ海兵隊の進路を遮るように現れたその母は、対戦車手榴弾を子供に手渡した。クリスは上官に指示を仰ぐも、明確な返答はなかった。そして引き金を、引いた。

これは、イラク戦争で伝説と称されたアメリカ海兵隊の狙撃兵、クリス・カイルの伝記である。
人を殺害することに加え、戦場で死が間近に存在する状態のストレス。仲間や弟も傷ついていき、派遣のたびに追い込まれ精神がすり減っていくクリスが、なんとも痛ましい。
1度目の派遣で、すでにまともな状態ではなくなっていたように思う。病院での態度などから、瀬戸際の状態が垣間見える。
妻のタヤ・カイル(シエナ・ミラー)は、クリスのメンタルのケアを完全に放棄していたように見えた。自宅ですら満足に安らげないのなら、尚更、妻のケアは重要なはずだが。
戦地でも、自宅でもすり減らした心は、最期まで戻ることがないままで、哀れだと思ってしまった。
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