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アメリカン・スナイパーのRのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.4
劇場以来はじめての2回目。大好きな他のイーストウッド作品と比べると個人的にはほんのちょっと落ちるけど、大変見応えのある傑作でした。冒頭、凄腕のアメリカン狙撃兵クリスカイルが、イラク戦争中の市街地において、爆弾を持ってると思われる子どもと女に狙いを定め、撃つのか撃たないのか? バーーーン!あ! 撃ったか!と思いきや、子ども時代にはじめて父と鹿をハントしたシーンにフラッシュバック。そこからクリスがテキサスで父のマチズモに染められ、やがてカウボーイになり、SEALsの隊員になって…という流れをイーストウッド流の手際良さでささっと描き、ガチムチのイケメンに鍛え上がったクリスはバーで出会った女と恋に落ち結婚。と同時に、イラク戦争へ。ってとこで再び冒頭の修羅場に帰ってくる。一体彼は女子供を撃つのか撃たぬのか……! それはさておき、クリスは戦場での狙撃殺戮ツアーに4回派遣される。で、毎度ツアーが終わると一旦帰宅するんやけど、帰ってくるたびにますます人格が崩壊している、そして、そんな彼に激しい不安と非難をぶつける奥さん。またクリスが戦場に戻るたびに戦況も泥沼化していき、どれだけ殺しても殺しても戦いに勝ってる!という爽快感がまったくない。淡々と殺戮を繰り返すクリスに気づかぬうちに不穏な業が積み重なって行く。殺しシーンが大好きな私にとって、激戦時の殺し殺されの様子、バチュンて撃たれて肉が吹っ飛んで即死な感じとかすごくリアルで良かったし、子どもをもひどいやり方で容赦なく殺しているのをしっかり見せてるのは特に良かった。あんま映画でそういうシーン見ないもんね。壊れゆく男を演じたブラッドリークーパーの、人間性が薄れ気狂いじみた感じになっていく瞳がリアルだったし、熊みたいなむちむちエロボディにまたがる奥さんの淫乱妊婦さも面白い。この2人のやりとりがなかなかに鬱陶しい。自分のやりたいことがハッキリしてる男はやっぱ結婚すべきでないよなと、どうしてもこういうの見ると思ってしまうわ。奥さんも、この人選ぶなら相当の苦労があることハナから覚悟しとけよ。てか、分かってたやん。後になってビービーと。まーいいんすそれは笑 あとは音の演出がめちゃくちゃ派手! 戦場の攻撃音をさんざん耳朶に焼き付け、平穏な生活の中に残響を聞かせたあとで、最後に驚きの圧倒的サウンドオブサイレンス。はじめて劇場で見たとき、外に出ると、いろんな音が膨張して聞こえる気がしたのを今でも覚えている。あと、劇映画としてのラストショットがすごかった。鳥肌立った。こういうさらっと凄まじい演出やらせるとイーストウッドはヤバい! 戦闘シーンが長いとちょっと退屈やなと思ったのと、最後の方カオス過ぎて頭がぼやーんとしてしまうが気になった。とは言え、戦争の英雄という存在の真の意味を問うという点でも、すごく興味深い作品だと思うので、是非とも父親たちの星条旗と合わせてご覧になるのがよいのではないでしょうか。個人的には一風変わったトリッキーな演出の父親たちの方が好きかなー。
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