グリーンツー

アメリカン・スナイパーのグリーンツーのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

この作品にはBGMやCGといったものが、ほとんど存在しない。役者の演技とカメラワーク、それがこの作品の「演出」のほとんど。それだけで2時間以上も観ることが苦痛にならない。クリント・イーストウッド監督の「芸術的センス」をとても感じる作品。「シンプル・イズ・ベスト」を地で行く作品。料理で言えば、塩だけで味付けしたステーキ。

普段は「普通な」人々が、戦争に行くことで「壊れて」しまう。そういう、戦争という状態の特殊さ、異常さみたいなものを描きたい作品なんだと思う。

そして無論、アメリカ国民のナショナリズム高揚という目的もあると思う。

クリント・イーストウッド監督がイラク戦争をどう感じているのか分からないけど、それはこの作品ではあまり重要ではないと思う。たとえイラク戦争が「間違い」だと思っていたとしても、兵士が「戦わなくてもいい」理由にはならない。いや、むしろ国が「間違いを犯していても」戦わなければいけない兵士の姿を描いたと考えれば、この作品の意味も変わってくる。

あと、作品の最初に「羊と狼と番犬」の話が出てくる。この作品の一番のメッセージは、やっぱりそこに尽きる。アメリカは「番犬」。だから戦いを続けないといけない。他国から見たら勝手な話だけど、「アメリカ国民」自身が今さら、「イスラエル建国は間違いでした」や「イラク戦争は間違いでした」と言うわけにはいかない。だから、アメリカが戦うための「大義名分」、それを今必死に探しているんだと思う。この作品は、そういうことを伝えたい作品なんだと思う。