タンモ

アメリカン・スナイパーのタンモのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
5.0
疲れる程の緊張感。


クリス・カイル。
ネイビー・シールズが誇る凄腕スナイパー。

9.11によってイラク戦争が始まり、彼は軍人として現地に派遣されます。
何度かの遠征を経て、彼は戦争の凄惨さに心を病み軍を去っていく者、戦地で負傷してしまった者を何人も目撃していましたが、彼に迷いはありません。
国のために、仲間を守るために戦います。
何人もの敵を射殺した彼は、仲間からは「英雄」と呼ばれ、敵からは「悪魔」と呼ばれる様になります。

しかし、戦争という非日常と家族との日常を繰り返すうちに彼は違和感を覚えるようになります。
アメリカのために戦っているのに、そのために命を落とした人がいるのに、どうしてこの国に住む人たちは平気でいられるんだ。
この国の平和は一体誰のお陰だと思っているのか。

英雄と言えど彼もまた一人の人間であり、戦争は静かに彼の心を蝕んでいたのです。

そんなある時、彼は敵のスナイパーに仲間を殺されてしまいます。
それから彼は復讐に燃えてまた戦地に赴き、そして見事敵を仕留めることに成功します。

復讐を遂げることはできましたが、復讐の先には何もありませんでした。
戦争によって傷付いた心だけが残ってしまいました。

心身共に疲弊した彼は軍を辞め、 医師の勧めで傷痍軍人との交流をするようになり心の平穏を取り戻していき、彼は自分と同じように心を病んでしまった軍人を支援するための活動を始めます。

そして彼を必要としてやって来た患者に射殺された...。


戦場の描写は疲れるくらいの緊張感でした。
任期を終えて祖国に帰って来て家族と過ごす日常。この落差ね。
本当だったらこれが一番の幸せのはずなのに心此処に有らずで、何が日常で非日常なのか分からなくなっていく主人公。
また戦場に行くつもりなら別れると奥さんに言われても、それを押し切って復讐のために戦地に赴き、敵を仕留めた結果得た物は何もなく、泣きながら奥さんに「帰る」と電話したシーンとかはもう見るに堪えないものがありました。

その挙げ句殺されるって...。
喪失感。アベンジャーズ/エンド・ゲームを観た時に似た感覚。

衝撃的過ぎてしばらく立ち直れませんでした。
タンモ

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