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アメリカン・スナイパーの月のレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.5
全く楽しくない。
何も面白くない。

映画への感想ではない。
惨さしかないこの悲劇そのものに対する率直な感想だ。


「番犬」として家族や仲間を守る大切さを教えられたクリス。
この動機自体は何ら間違っていないからこそ、自身が「伝説」となってゆくことに戸惑いを覚える。

仲間を守るという「善」を求める度、ある誰かの仲間や家族を殺める「悪」を犯さねばならない。

このジレンマこそ戦争の最も残酷で、根源的な要素だと感じる。
自ら遂行した「善」は、敵からみれば「悪」でしかない。
たまたま属する立場が異なるというだけで、対岸の相手を貶め、殺める非道が「正義」となってしまう。

戦争においてどんな遠くの対象も捉えられた彼でさえ、戦争における「正義」が何なのか捉えることは出来なくなってしまったのだった。
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