キウイ

ナショナル・シアター・ライヴ 2015「フランケンシュタイン」のキウイのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

ジョニー・リー・ミラー怪物版を鑑賞。途中でこのストーリーをよく知っていることに気づいて、大昔にケネス・ブラナー監督の映画版を観ていたことを思い出した。その時もあまりの気持ち悪さに心の中にドロドロとした黒く重たい置き土産を残されたような心地がしたが、本作を観たあとも似たような気分になった。
月並みすぎる感想かもしれないけど、死体をツギハギして生命を生み出すなんて発想からしてあまりにも嫌すぎる。作中で怪物が似たようなことを言っていたかもしれないが、まずはこのどうしようもない変態的悪趣味をもつ博士こそ紛うことなきモンスターだ。博士の心理に触れた時の気分は、例えるなら猟奇的殺人事件のニュースをみたり読んだりして常人には理解不能な凶悪殺人犯の心理を覗いた後の気分と似ている。そんな人物が人々から尊敬されながら生きる術を心得ていて本当に恐ろしいと思うが、こういうことって現実世界でも普通にあるし、誰の心の中にも博士のような部分が多かれ少なかれあるんだろうな。そんな博士にも人を愛する心はあるようだし、怪物も純朴かと思えば怪物の名にふさわしいドクズぶりを何度も発揮して人の良心をなぎ倒すし、両者の振れ幅の大きさに結構疲れた。フィクションだからことは大きい方がスリリングにしても本当に言葉にできないほどひどい奴らである。
そんなどうしようもなさに強い嫌悪感を感じつつも面白いとは感じたし、多くの人に鑑賞されてしかるべきクオリティの作品だと思った。主演2人をはじめ俳優陣の演技は本当に素晴らしかったし、凝りに凝った演出の数々にも終始びっくりし通しだった。博士と怪物を入れ替えて2パターンで上演したアイデアは、たとえ2つを見なかったとしても深い示唆を与えてくれて本当に秀逸だと思う。
キウイ

キウイ