お豆さん

いつか行くべき時が来るのお豆さんのレビュー・感想・評価

いつか行くべき時が来る(2012年製作の映画)
4.0
失恋したばかりで、それだけでなく自分の進むべき道についても悩んでいた時期に見て、さらに憂鬱の奈落に突き落とされた本作。数ヶ月は引きずったかな。何かから逃げるようにイタリアからブラジルに渡り、そこでまた傷つき動けなくなっていく主人公の姿が自分と重なり、今はそこで丸太みたいに転がっていても、いつか勇気を振り縛って旅立たなくてはいけない、『いつか行くべき時が来る』というタイトルがそのまま自分に言われているようで。

rai cinemaのオンデマンドで本作を見つけて、久々に見直してみようと思ったのだけど、またあの憂鬱の海に溺れるのが怖くて再生のクリックができない。結局、あの失恋をまだ完全に克服してはいないし、自分の進むべき道についても不安だらけだ。いつか、正面から向き合う勇気を持てることを願って。

***

いくつかのシーンを見返していくうちに、映画をもう一度見たいという気持ちが湧いてきた。あの時は自分を重ねすぎて、憂鬱なばかりな映画だと思っていたけど、今見るととても美しい映画だった。まだ言葉を十分に理解していなかったから、とても感覚的にストーリーを理解して、当時の自分の心境に共鳴する感情を強く感じてしまったのかもしれない。

ポルトガル語のゆったりとしたリズムの心地よさとハンモックに身を埋める感覚への憧憬。キリスト教の宣教者たちを中心に現代社会との接触を持ちつつあるアマゾンのコミュニティに始まり、近代化された大都市のフィットネスクラブと、そこに隣り合わせるスラム街、そして誰もいない白い島。そこに時折差し挟まれる冬の北イタリアの風景。そういったブラジルを巡る様々な現実を丁寧に映し出しながら、見失った人生の意味を探し求める女性の姿を静かに見つめるまなざしがいい。

2016. 50
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