タケオ

エリザベスのタケオのレビュー・感想・評価

エリザベス(1998年製作の映画)
4.0
プロテスタントの反乱を計画したとして1年近く投獄されていたものの、メアリー1世の死去により25歳という若さでイングランドの女王となり、45年という長きに渡る統治で英国に黄金時代(ゴールデン•エイジ)をもたらした'ヴァージン•クイーン'ことエリザベス1世。本作は、そんな彼女の半生を血に塗れた権力闘争劇として荘厳かつ生々しく描き出す。本作の主人公エリザベス1世を演じるのは、オーストラリアを代表する実力派女優ケイト•ブランシェット。『ロード•オブ•ザ•リング』シリーズ(01〜03年)ではエルフを、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年)では女神ヘラを演じるなど、人外キャラクターを違和感0で難なくこなすことに定評のある彼女だが、その原点は間違いなく本作での演技にある。エリザベス1世は基本的には'人間'なのだが、本作はそんな彼女が権力闘争の中で一切の'人間性'をかなぐり捨て真の意味で'女王'になっていく様を描く、いわば女性版『ゴッドファーザー Ⅱ』(74年)なのだ。ラストで彼女は、真の女王として降臨するために美しき髪を切り捨て肌を白く染め上げる。人間としての過去を切り捨て、弱き己を塗りつぶすかのように。エリザベス1世が女王という'偶像'へとなり果てたその瞬間、本作が実は残酷極まりない「アイドル映画」であったことに気づかされる。そして鑑賞者は、人外キャラクターとしてのケイト•ブランシェットの真の本領を目撃することとなるのだ。
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