和桜

フレンチアルプスで起きたことの和桜のレビュー・感想・評価

3.9
スウェーデン映画界の中でも異色の才能を放つリューベン・オストルンド監督作。ある家族が雪崩に巻き込まれそうになり、その時とった父親の行動が原因で夫婦の関係に亀裂が走る。雪崩に巻き込まれた話ではなく、巻き込まれたかもしれない状況で見せた相手の本質をじわじわと追求していく。誰の身に降りかかってもおかしくない日常を、ここまで緊張感を保ち描ききってしまう上手さ。

序盤の煮え切らないやり取りから、しょうがないじゃん!と開き直った瞬間に映画の次元が変わる。シュールなんだけど、何故かとんでもないカタルシスを感じてしまった。あの抱擁とか完全に狙ってるんだけど、ほんと絵になるんだよなあ。
家族というより父と母、男と女の話でありながら、最後にきっちり家族映画にしてしまう秀逸な脚本。固定カメラや引きの長回しを多用する、大仰ではないのに表現豊かなカメラワーク。この監督の作品は全てが綿密な計算通りに進んでいくような、才能を見せつけられてる感が本当に恐ろしい。
北欧映画は相変わらず信頼という関係や既存のコミュニティにどこまでもシビアで懐疑的だなと感じる。
和桜

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