このレビューはネタバレを含みます
実際にあった幼女暴行事件を描いた作品。
子供が誘拐されたり、殺されてしまう作品は数あれど、本作で描かれる事件は、子供が暴行を受けるも一命を取り留めます。
「命が助かって良かった…」と思っていたら、暴行のダメージが予想以上に大きく、人工肛門を付ける事を余儀なくされると。
何の罪もない少女が、暴行され、障害を負わされる理不尽さたるや…。
行方不明や死体となって発見されるよりも、むしろ生き残ってしまう方が辛いのではないか?という事すら思ってしまいました。
ただ、それでも救いとなったのは、暴行されても尚、正義と優しさに溢れた少女の純粋な心。
ボロボロの体にも関わらず、犯人の特徴を伝えようとする彼女の賢明さには、崇高なものを感じざるを得ないし、それを受け止め、狼狽してしまう父親の姿も印象的。
子役の名演に、父親役のソル・ギョングも最大限の演技で応えていて、このシーンは本作のハイライトと言ってもいいでしょう。
中盤以降は少女と家族の再生の物語が描かれ、泣きポイントも数多く用意されているので、誰かしらに感情移入して見れるんじゃないかな。
個人的には、少女の友達である少年の号泣シーンが泣けました。
ツンケンした態度を取っていたけど、彼なりに責任や後悔を感じていて、ずっと苦しんでいたんだろうなと。
少女と家族だけでなく、その周辺の人々まで描く事で、より射程圏の広い作品になった様に思います。
終盤では裁判の結末が描かれるわけですが、登場人物がやたら泣き叫び出す演出は、ちょっと杜撰に感じました。
映画を盛り上げたいのは分かりますが、裁判所でそれはないでしょ…という描写が多く、興醒めしちゃいましたね。
正直、娘が通学するまで回復し、父親との仲も和解したところで終えても良かったと思うのですが、酩酊状態による減刑も実際にあった事らしく、問題提起する上でも描く必要があったのかもしれません。
事前情報を入れずに見たので、見ている最中は「流石にフィクションでしょ」と思っていたら、これが実際にあったというのだから、二重の意味でショックでした。
人間はここまで酷い事が出来るのかと…。
泣けるは泣ける映画だと思いますが、内容が内容なだけに人を選ぶ部分がありますし、エンタメ的な消費をするのも気が引けるしで、なかなか話題にし難い作品ではあるのでしょう。
それでも、個人的には見て良かったなと思います。