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フットノートのakrutmのレビュー・感想・評価

フットノート(2011年製作の映画)
4.0
文献学者で大学教授である親子の物語。息子のウリエルは華々しい活躍をしている新進気鋭の学者であり、父親の頑固さを疎んじているが同時に尊敬もしている。一方で、父親のエリエゼルは研究一筋のクソ真面目な人生を送っているが、要領の悪さもあって大した業績も残せずに、息子の後塵を排している。そんな状況の中で、父のエリエゼルにイスラエル賞受賞の知らせが舞い込むが、実は息子のウリエルが受賞者に選ばれていて、その知らせが手違いで父のほうに行ってしまった。息子は父の気持ちを知っているため、なんとか父の受賞にしようとして、というように話が進んでいく。

なかなかストーリーとして面白いし、研究者の物事に対する考え方などが上手に描けている。エリエゼルの虚栄心がむき出しになるとあらすじにはあるが、それほどではない。インタビューの中で、息子も含めて最近の研究者に対する苦言を呈する場面があるが、まあ普通のコメントのレベルである。そういう意味で、映画全体として大げさなことは起こらないが、父親から批判された息子の苦悩・やるせなさや、最後に文献学者らしく真実を知ってしまう父親の虚無などが自然に描かれている良質の映画であると思う。特に、同業者の人たちにオススメである。
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