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アデライン、100年目の恋のTorichockのレビュー・感想・評価

アデライン、100年目の恋(2015年製作の映画)
3.9
The Age Of Adaline/アデライン、100年目の恋」

2013年96本鑑賞中、あの「もらとりあむタマ子」を抑え、10位に入賞した「セレステ&ジェシー」の監督、リー・トランド・クリーガーの最新作。
ちなみに、「セレステ&ジェシー」のレビューは、自身のレビューの中でも2013年に書いたものでは、ベストだったように思えます。

不慮の事故により、肉体的に歳をとることが出来なくなってしまったアデライン
。名前や住む場所を転々とした彼女は、人を愛することを逃げて生きてきた。
しかし、年越しパーティーで出逢った人エリスに猛アタックされ、どうしようもなく何十年かぶりの恋に落ちてしまう。しかし、エリスとアデラインには、とある運命が待ち受けていた。

という、いかにも女子が好きそうなお題目で、いかにも女子が好きそうなブレイク・ライブリーがやることから、少し腰が引けていたのですが、彼の作品なら性別を超えた何かを得れるのではないかと思い、朝イチで鑑賞しました。

何よりも思ったこと。
それはまず、この話のプロットからして、どこがで聞いたことがあるような話であるし、どこかで観たことあるような物語であることは否定のしようがない。
でも、映画に大切なのは物語の本質ではなく(シャマラン、ごめんよ!お前の悪口じゃないぞ!)、ありきたりで読めるストーリーの中でも、その中にどれだけ厚みのある時間や画を描けるかがポイントなのではないでしょうか?

そういう意味で、やっぱりこの監督の手際の良さも感じながら、同時に、退屈させない丁寧でうまい作りを感じることができました。

例えば、種というワード。
今年の「MAD MAX」以降、とても大切な言葉になったものです。

思えば、思い出というもの自体、僕たちは毎日の生活の中で種を植え続けていて、それはいつのまにか過ぎていく時間の中で、芽を出し、人生のポイントで振り返った時、花となって自分の歴史の1ページになっているものだと思ったのです。

種を植え続けていくだけの人生、そして、その種が花を咲かせた時に、共に振り返ることの出来る人のいない人生の苦味を、この映画の中で感じました。

長く生きる幸せと、苦悩。

また、それを演じるブレイク・ライブリーも本当に美しい。
「タウン」「野蛮なやつら」「HICK」海ドラを見ない僕が知る限り、ビッチなイメージが色濃い彼女ですが、本当に美しかった。特に、年越しパーティーのドレスの曲線と、艶っぽい髪から、本当に綺麗なアメリカンビューティーでした。
旦那が、シャクレ「リミット」ライアン・レイノルズっていう嫌な感じさえなければな!

さて、映画の中でアデラインの人生が触れてきた歴史の通過点も語り口もとてもスマート。
任された残業業務がフィルムのデータ化と確認作業だったり、初デートが採掘現場だったりする。人が生き、人が感じてきた匂いのするもの中に生きる、"その人自身が深い歴史を持つ"というコントラストは、味わい深いなと思いました。

犬も非常に大切なポイント。
なぜなら、人間がペットを飼う時、恐らく多くの場合において、ペットの方が先立つ可能性が大きい。
アデラインにとって、ペットのわんちゃんは、人と出会い愛情を深めたいという人間が元来持つ人間らしい人間性を、唯一開けっぴろげに出来た存在だったと思うんです。些細なことが命取りになるという、分かりやすい伏線も、僕は嫌味ではなかったです。

すごく女性的な面を賞賛しましたが、実はこの映画、序盤とオチに変なSFっぽいナレーションが入るんです。それが妙な空気感というか、なんかバカっぽいんです。
レビューを読んでると、そこに嫌味を感じる人もいるんですが、僕的にはそこも
バランスの良さに感じました。

なぜかというと、艶っぽいベタベタなラブストーリーには転がさないで、どこかSF的アホっぽさを混ぜることで、僕みたいなタイプも見れる間口になっているというか。
正直、オチの部分に関しては、完全にコメディと思ったんですが。

要するに、あんな真面目にAEDの説明されたら、笑いますわ!

うん、それが言いたいだけです。

とても見やすい映画でしたし、ある種の風格を感じさせる美しい上品な作品でした。悪くないじゃない?
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