ろく

めぐり逢わせのお弁当のろくのレビュー・感想・評価

めぐり逢わせのお弁当(2013年製作の映画)
3.7
踊らないインド映画。僕はインド映画だと「ムトゥ」のような踊る映画しか見てなかったので(いや大好きだけど)、こんな繊細な映画をインドでも撮るんだとまず吃驚(失礼だぞ、インドに)。

インドの現状、差別、貧困、男尊女卑などをところどころに見せながら夫婦の問題、死について、仕事についてなどをさりげなく(お仕着せがましくなく)見せてくれるのがいいですよ。

とくに僕は主人公の男性が初老を迎え、女性に対し弱気になってしまっているシーンに涙した。「朝起きると祖父の匂いがしたんだ」そう、それは僕も最近感じることなの。もう若い中には入ってはいけないのでは、そう何度も思っていた。そしてそれが理由で臆病になってしまっていることも。

でもね、ほんとは若いものたちの中に入りたいんだ。でもそれは「自分を壊す」からできないの。そんなこと考えなくてもいいんだよ、そう人は言うけどそんな簡単なものでないんだ。白髪が気になり匂いが気になり、さらには着ているものも「無難」がいいと思ってしまう(それは臆病さから来ているんだけどね)。

オーデコロンをつけても匂いに「加齢臭」が混じり、頭はいくら染めても次々に白いものが見える。新品の服を買ったはずなのに10年以上着ているような草臥れた感じになってしまう。そんな自分に自信があるわけないじゃないか。その気持ちはほんとここ10年で急に増えてきた。

最後にドラマチックな展開はない。それはリアルではないんだ。でも僕はどこかで信じている。この映画が終わったあとに二人が会うシーンを。それを信じているだけで今日も生きていける。そんな気持ちになった。

間違った弁当箱でも、間違った電車でも、偶然たどり着く場合もある。それを僕らは希望と呼ぶんだ。
ろく

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