ちろる

悪童日記のちろるのレビュー・感想・評価

悪童日記(2013年製作の映画)
3.7
第二次世界大戦下、戦況が激しくなり突然前触れもなく母親の実家に預けられる双子の少年たちの過酷な日々。
「メス犬の息子」と呼び一向に孫を可愛がらない魔女の異名を持つ祖母に毎日のように働かされ、決して楽ではない生活を強いられる。
コソ泥と間違えられて、村の大人にボコボコにされれば、互いを殴り合い痛みを感じないトレーニングをし、空腹と寒さで息絶えた兵士の死体を見たら絶食のトレーニングをするとは、、なかなかのたくましい少年たちだ。
少年たちの視点はとても冷静で淡々とした作品なので面白いというわけではないが、次に何が起こるか分からない展開が次から次へ訪れて緊張感は最後まで途切れない。
陰鬱な大人たちに囲まれて、ごく普通の無邪気な少年たちだったはずの彼らの表情が険しく鋭くなっていく。
見てはいけないものをたくさん目の当たりにして戦争が彼らにもたらしたものは彼らの年齢には手に余る強さだけ。
戦争は終わった後も双子には平穏な日々は訪れず、どんよりとしたハンガリーの空の色は晴れることはなく、不安だらけの彼らの住む魔女の家は重々しい空気に包まれる。
残酷な時間は愛のぬくもりを求める気持ちさえ奪い去り苦悩を耐えうることだけが生きる唯一の術だという結論に陥った彼らが自分たちへ与える最後の試練は予想以上に衝撃的だった。
静かで地味な作品なのに、オープニングからは想像できない、ゾワゾワするラストシーンは必見。
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