山本

メビウスの山本のレビュー・感想・評価

メビウス(2013年製作の映画)
3.8
母が息子のペニスを切って食べる! 父がペニスを切って息子に移植! 息子は母にしか勃起しない身体に!

ラカンの理論を使ってあれこれ言いたくなる映画だった。でも誰も言ってないのが不思議だった。
エディプスコンプレックスとか知っているだけでいろいろ分かってくるような気がする。人間は母にペニスがないことを知り自分と母は別の個体であることを知る。さらに母は自分ではなく父の支配下にあることを知り、去勢不安のもとに近親相姦の欲求を捨て、自我を獲得していく。ここまでフロイト。ラカン的にはこの過程が想像界からの脱却、象徴界への参入と整理される。言語をもたない段階での母子関係が想像界で、言語をもった段階が象徴界。去勢を経て人は主体を獲得し言語を操り象徴界に参入する。
去勢は通常父による脅しを意味する。ママに甘えてばっかりだとペニス切るぞと。この去勢とはもちろん比喩にすぎないんだけど、この映画では父ではなく母が文字通りペニスをちょん切る。父は象徴界の構成要素だけど母は想像界の構成要素。母による去勢は母と子の未分化な融合関係を強化する。ママもワイもペニスないやん。かくして主人公は象徴界に参入することなく想像界に安住する。象徴界とは現実を構成する言語のことだから、この映画の世界にはセリフが一切ない。ということなんじゃないかと思った。

精神分析に詳しい人であればもっとスキームをブラッシュアップできると思うんだけどどうなんでしょう。仏像のモチーフの意味も解明できていないので、なにかフックになる概念がないかな。なんで2回目のシーンで古物商のウインドウの外に出てたのかとか。
ナイフオナニーの意味とかもなにかが隠されているんでしょうか。
山本

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