こたつむり

グッド・ライ いちばん優しい嘘のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.3
悪意で切れた鎖を善意でつなぐ物語。

うわぁ。これはかなりヘヴィな作品でした。
タイトルを見ただけで「あざといなあ」と思った自分を厳しく戒めたいですね。

題材からして。
スーダン内戦で故郷を奪われた兄弟の人生…という安易な気持ちで取り扱えない代物。鑑賞中は背筋が伸びることは間違いなし…そんな作品なのです。

その物語は、大きく二つに分かれます。
前半は、彼らがスーダンから脱出するまでですが、待ち受ける困難はひたすらに苛烈。何しろ、相手はアフリカの大自然ですからね。その部分だけでも、一本の映画として成り立つ重みがあります。

しかし、本作で重要なのは後半。
彼らがアメリカに移住してからでした。確かに「脱出できて良かった」で終わらないのが現実。アフリカでの常識が通用しない先進国は、文字どおりにコンクリートジャングル。違った形のサバイバルが待っているのです。

だけど、これはなかなか難しい展開ですよ。
思慮が足りない演出は、文化のギャップに戸惑う彼らを晒すことになりますからね。丁寧な舵取りが必要とされる重要なポイントなのです。しかし、本作が見事なのは、それを避けずに深くまで切り込んでいったところなのです。

それは、スーダン人としてのプライド。
それは、亡くした家族や祖先への敬意。
それは、アメリカ人では描き切れない部分。

そして、主要なキャストが。
“実際に難民だった”そうですからね。説得力が違いますよ。何しろ、眼差しからして本物。安易な想像なんて許さない“過去”を抱えているのは間違いないのです。

まあ、そんなわけで。
タイトルは『グッド・ライ』ですが、物語自体は“真実”。世界の片隅で起きている悲劇に目を向けるきっかけとして、そして小さな善意が光を灯す物語として。是非とも遍く人々に観てもらいたい…と思う作品でした。

ただ、ひとつだけ物申したいのが。
レンタルで鑑賞しようとしても「TSUTAYAだけ」なのですよね。これは作品の趣旨に反している所業。いつもお世話になっていますから、文句は言いたくないのですが…今からでもご一考戴きたい所存です。本作に必要なのは気軽に観ることが出来る環境ですよ。
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