こたつむり

機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバルのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.4
★ 見せてもらおうか、
  最新技術で作られたガンダムとやらを

着眼点は良かったと思うのです。
原作は全24巻もあるので、丁寧にアニメ化するのは困難極まる話。だから、オリジナルの『機動戦士ガンダム』で描かれていないエピソードを選んだのは、話題性から言っても慧眼でした。

しかし、その代わりに。
原作に初めて触れたときの興奮。
それを削ぎ落としてしまったと思うのです。

原作で楽しいのは、オリジナルとの差異を噛み締めること。登場人物たちの年齢設定を見直したり、モビルスーツに現代の解釈を加えたり。そんな“違い”が胸をときめかせてくれるのです。

だから、オリジナルでは描かれていない《赤い彗星》が生まれるまでのエピソードを選んだ時点で…この結果は当然だったのでしょう。ちなみに原作では、作品に馴染んできたあたり(単行本9巻)の物語ですからね。“構成の妙”を感じますよ。

また、本作は主人公(キャスバル)に自分を重ねるのではなく、オリジナルを補完するように「へえ、そうだったのかあ」と感慨に耽る方向性。ザビ家の次男サスロの存在や、ドズルの顔の傷、キシリア姐さんが裸で寝る…などの新事実に面白さを感じるか、が分水嶺なのです。

それに総監督は原作者の安彦良和先生。
原作とアニメの違いが気になるわけがなく。
むしろギャグの描写まで忠実なので、オリジナルとのギャップに違和感を抱くほどでした(個人的にドズルは毅然とした姿でいてもらいたい…)。

まあ、そんなわけで。
とても貴重なU.C.0079より以前を描いた物語。
クオリティの高さは折り紙付き…なのですが、どちらかと言えば原作を知らない人向けの作品だと思いました。

なお、モビルスーツ戦には期待しないでください。冒頭で描かれるルウム戦役で“ザク無双”を観ることも出来ますが、本編で活躍するのは初期型ガンタンクのみ。ミノフスキー粒子を有効活用できていないのに人を模した形の戦車を作る…という連邦軍のキ×ガイぶりを再認識するだけなのです。

ジーク・ジオン!

To be continued… →→→ 
      『哀しみのアルテイシア』
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