ぼくらには生活があって、その生活は思ったよりも多くの他者とのつながりでできている。時間の流れをゆるやかに感じながら、これまで出会ったひとと、別れたひとの顔を思い出してみる。好きだったひと、好きになれそうだったひと、どうしても好きになれなかったひと。そのだれもに同じように生活があって、幸せや喪失を感じているのだ、と思うと、晴れた夏の日の海の、あの果てしない水平線を眺めているような心地になる。「家族」や「縁」ということばが嫌いだった、だけどなぜだか今はそれが陽だまりのような暖かくて優しいものに感じられるのだ。
