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オートマタのしゃにむのレビュー・感想・評価

オートマタ(2014年製作の映画)
3.5
「私はたかが機械だがお前だってたかが凶暴な猿じゃないか」

略してオマタ…

↓あらすじ
近未来の地球気候変動の影響で人口の90%が死滅、地表は汚染され砂漠化が進行。残り少ない人類を守る為、また砂漠化阻止の為に人工知能を持つロボットが発明された。ロボットを製造する企業の保証代理人が不可解な事件に遭遇する。ロボットを改修するのはロボット会社しか許されていない。しかし改修されたロボットが流通しているのだ。調査に乗り出し、不法改修した技師を突き止めるべく改修ロボットを追跡すると、ロボットが焼身自殺してしまった。ロボットは自殺出来ないようにプログラミングされているのだ…

・概略
滅び行く人類の最後の悪足掻きを描く人間嫌いが進行するSF作品。SWに出てきそうなのろまなロボットばかり出てきて人工知能モノの人間性が演出出来ないのでは、という危惧もあったが、人間性の獲得というより人間以上の存在に自由になるのが主題らしい。オールドタイプのロボットのぎこちない動きがまた味わい深い。人間の残虐な行いにも危機感なしの無表情だから胸が痛む。人間の悪が強調されて描かれ、いずれ滅び行く運命なのだろうと察せられる一方で、自我を獲得し人間の強制から解放されて自由に生きるロボット達に未来が感じられ、生と死の2つのイメージが鑑賞後にぼんやりと余韻に残った。際立ったアクションも無く、何やらブレードランナーみたいな風景に既視感、人工知能の人間性の倫理的問題がメインではないので、娯楽作としての鑑賞には不向きかと。個人的には妄想が捗ってそれなりに楽しめた作品。

・オマタでオワタ
人間は自分たちと似ているものや自分たち以上の存在を恐れる傾向がある。猿の惑星や人工知能関連の映画が作られるのはそのような傾向があるからだろう。今作のロボットは人工知能搭載型とはいえポンコツ。ドロイドみたいにトロい。何故なら人間がロボット達に制約を課しているからである。人間の言いなりになれば十分、ロボット達に自分達で考えさせ行動させる必要は無いのだから。しかし厄介な事が起きてしまう。ロボットの改良を勝手に行う謎のエンジニアが現れた。ロボットの改修はロボットの生みの親ロック社が独占している。下世話な話、一般人が改修出来たらロック社は倒産してしまうのだ。更に悪い事に、謎のエンジニアはロボットに自我を与えてしまった。ロボットは人間の命令を無視して独自に行動してしまう。ロボットは自分達と同じくらいの知性があるから人間の存在価値が無くなってしまう可能性がある。作品の世界では人間は急激に死に絶え、生き残れるかすら分からない。自分達に存在するロボット達がロボット達の為に存在しだしたらたまったものではない。危機的時期に自分達にとって替わる存在が出てきたら意地でも彼らの存在を否定する。ロック社が主人公に謎のエンジニアを見つけ出すようにしつこく命じるにはこのような事情がある。人間はサバイバルに必死で、凶暴性が剥き出しでロボットをどんどん抹殺する。しかし自我を持ったロボットは少しずつ増えて行く。汚染され人間が近寄れない砂漠の果てに自分達の理想郷を築こうとする。明暗が分かれる対比だと思った。銃を突きつけ凶悪な表情の人間に「たかがロボットのくせに!」と言われ、臆する事なく「お前だってたかが凶暴な猿じゃないか」と言い返すシーンは特に印象的。近い将来、人間が姿を消しロボット達が人間達の代わりに地球の住人になる…そこまで明確な描写はないがそんな風景が目に浮かんだ(あれこれ考え見入ってて、手にしたドクターペッパー入りコップが逆さになりオマタがビショビショでオワタ…)
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