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妻への家路のmaverickのレビュー・感想・評価

妻への家路(2014年製作の映画)
4.7
チャン・イーモウ監督の枯れることのない才能をひしひしと感じる作品であった。本作で題材となっているのは中国の文化大革命。このことについて自分は詳しくないが、作中での表現はいわゆる中国らしいなというイメージそのまま。本国の人が観てどう思うのかは分からないが、中国という国の悪しき部分を訴える作品をこのように発表したチャン・イーモウ監督は素晴らしいなと思う。しかし本作で描かれていることは何も中国だけのことではない。アメリカやロシア、イギリスやドイツ、どこの国にもこうした国によって犠牲となった国民がいた時代があった。世界中の国で。日本もほんの少し昔は同じようなことが起きていた。監督が言いたいのはそういうことではないかなと。舞台は文化大革命の時代の中国。危険分子と見なされた男は投獄される。その夫の帰りを待つ妻。娘は父が逮捕された時は3歳で、父の顔すら覚えていない。時は流れて20年後。ごく一般的な一つの家庭が、国のしたことによってどんな犠牲を被ったのかというのが痛いほど伝わってくる。夫を失った家族がどうなったか。夫を失った妻が、父を失った娘が、妻と幼い娘と引き離された夫がどのように耐え、生きていったか。その中に描かれる家族の絆と愛に涙する。悲劇的な状況の中でも決して消えることのない愛が描かれた美しい作品である。夫を献身的に待ち続ける妻を演じたコン・リー、どんな絶望的な状況でも諦めずに家族を思い続ける夫を演じたチェン・ダオミン。この2人は最高のキャスティングであった。アジア最高峰と言って間違いない。娘を演じたチャン・ホエウェンは本作が映画初出演なのに圧倒的な存在感と光り輝く魅力が素晴らしい。アジア最高峰の映画。文句なしの出来だった。最近はアジア映画と言えば韓国映画の勢いが凄まじいが、中国もしっかりと自国の文化を生かした質の高い映画を作り続けている。中国、台湾、韓国は世界に負けてない。日本も頑張らないとね。
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