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虐殺器官のshihoのレビュー・感想・評価

虐殺器官(2015年製作の映画)
3.8
楽しみにしていたSF小説の映像化作品!(原作は未読)

サラエボの街が個人による核爆弾のテロで消失してから、米国をはじめとする先進国では、街中にカメラやらセンサーやらが張り巡らされ、買い物も指紋認証、建物に入るには顔認証、みたいな感じで24時間見張られているという個人のプライバシーを犠牲に国民はテロリズムの恐怖から解放された生活を送っている。

しかし、それとは真逆に後進国では内戦や虐殺が増加する一方であった。
それらを影で操っていると思われているのが、ジョン・ポールというアメリカ人。
主人公が所属するアメリカの特殊部隊、彼を見つけ出し逮捕することが任務となる。

絵柄は良くも悪くも無個性で、身内側のキャラクターが皆装備しちゃうと誰が誰だか分からない事が多かった。
2時間という時間の中でキャラクターに愛着を持たせる必要はない、というか今作は情報量が多いのでキャラクターは二の次なのかもしれないけど。もうちょっと主人公の顔(美形だけど魅力がない)なんとかならなかったのかな笑

でも戦闘時に出てくる最新テクノロジーを駆使した兵器だとかは映像的にも力入ってて観るだけでワクワク!
兵士達は精神をコントロールされているので、人を殺しても動揺しないで任務を続けられる。相手が少年兵でも構わず撃ちまくれるし、痛覚も感じなくなっている(ケガをした、という事はわかるので処置は出来る)。
それでもやはり脳内に何らかしらのストレスは溜まっていくようでPTSDを発症したり悪夢に悩まされる、という描写も見られる。
仲間が死んでも動揺しない&ほとんど悲しまない兵士達は、ちょっと怖くて可哀想な気持ちになりました。
「地獄は目の前の世界のことじゃない、ここにあるんです」と自分の頭を指して仲間の兵士が言うシーンがゾッとして良かったし怖かったです。

冒頭の潜入シーンではヴェートーベンの「月光」が穏やかに始まる冒頭から煽りに煽る(心臓に悪い)3つ目の章までストーリー展開と合わせて流れる。
おぉ〜とは思ったけど、やっぱりメジャーなクラシックを使うと曲に負けてる感はあった。
月光はなかなかに皆大好き厨二病要素があると思うんだけど、やっぱ映像載せずに聴く方が私は今のとこ一番好きなんだよな。
でもそのほかのシーンの音楽も力入れて作られていたと思います。

会話の中にカフカが出てきたり、
主人公もエリート、敵もエリートなもんだから会話が高度。
でも声優さんの力量で、字幕なしでも(でも字幕設定はつけてくれ!むつかしいワード並ぶSF作品は特にだ!泣)なんとかついていけました!
櫻井孝宏さんはいい声だし上手いな〜!なんか世を悟ってるみたいな傍観がありつつ狂気が滲み出てて魅了される声ですね。

ストーリー的には途中から展開が見えた所があったので、「くあ〜!!」って浸るには色々物足りなかったけど、約2時間、飽きずに最後まで観ることが出来ました!
原作を読んでいる人の感想を拝読すると、忠実に映像化しつつも主人公の性格や行動の基となっているであろう過去のエピソードが省かれていたりと、これでもまだまだ情報量が足りないようですね。
ただの惚れっぽい猪突猛進野郎に見えなくもなかったけど、原作の心理描写はもっと複雑なようだし。
映像で観てイメージしやすくなってると思うので、ぜひ原作に挑戦してみたいです♪

実写映画も作られるようで楽しみですね!アニメとはまた違った魅力が出る作品だといいな。

※映像的には観てて辛くなるものはなかったけど、敵キャラが蜂の巣にされたり子供や女性が撃ち殺されたりというシーンはあるので、
そういうの苦手な人はそもそも今作を観ないと思うけど笑、一応注意して下さい。
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