わたふぁ

狩人のわたふぁのレビュー・感想・評価

狩人(1977年製作の映画)
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172分、全編わずか47カット。人物を映すのは遠巻きで、ワンシーン・ワンショットが監督の題名詞です。

1976年から振り返ってギリシャ現代史を描いた今作。第二次大戦の後に起きたギリシャ内戦、すなわちギリシャにおける冷戦に関する知識が少々必要です。

1977年になろうとしている大晦日。狩人たちは雪原で倒れている死体を発見したことにより、そのあと不思議な体験をすることになるわけですが、その“死体が持つ意味”を理解するにはギリシャの歴史を知らなくてはなりません。

政治的要素を芸術的視点で捉える人。教訓的な主張も述べるが、未来への希望を込めることは忘れない。

映像が持つ力を信じる監督は、物語を意図的に構築すること、答えへの誘導を否定する。そのためにこだわり抜いた画は、一見の価値ありです。

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| 曇天の空 |
| 山の稜線 |
| 電線 |
| 対岸の家々 |
| 赤い帆を張る小舟の列 |
| 湖面 |
| 白鳥の行進 |
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それらが水平に伸び、ミルフィーユのような層になって画面を埋める。霧をまとった青色の中に赤い帆が差し込まれていく。ああ、美しい。

政治家の言葉より、映画監督の“視点”の方がよっぽど響く。「国を変えたい」という言葉より、確かな革命の意思。