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ミリオンダラー・アームのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・アーム(2014年製作の映画)
3.6
 アメリカ・ロサンゼルス、敏腕スポーツ・エージェントのボスであるJB・バーンスタイン(ジョン・ハム)は、相棒のアッシュ・ヴァスデヴァン(アーシフ・マンドヴィ)と女性マネージャーに囲まれながら、スカウトの予行演習をしていた。彼が次のターゲットに定めたのは、NFLのスター候補のポポ・バヌアツ。交渉も大詰めを迎える中、ポポに契約金として100万ドルを要求されたJBは表情を曇らせる。莫大な利益をもたらすアメフトの超有望選手をクライアントとして獲得寸前だったが、ライバル企業に横取りされ一転、会社崩壊の危機に陥る。スポーツ・ビジネスという業態で野心と夢だけで生きて来た男はここに来て、大企業に呑み込まれる危険に晒される。スーザン・ボイルの出ているリアリティ・ショーとクリケットの試合をザッピング中、何気なく観ていた自宅TVで彼はある奇抜なアイデアを思い付く。それは、野球不毛の国インドで未知なる剛速球投手を発掘し、同国初のメジャーリーガーを誕生させるという途方もない計画だった。早速、とあるメジャー球団のアジア系オーナーの賛同を取りつけると、『ミリオンダラー・アーム(=100万ドルの剛腕)』というリアリティ・ショー番組を企画。お調子者のアシスタント、アミト(ピトバッシュ)と元一流スカウトマンのレイ(アラン・アーキン)の協力を得て、インドのムンバイで第一歩を踏み出す。

 クレイグ・ギレスピーの4作目は初めて実際に起きた物語をベースにしている。『扉をたたく人』や『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・ホランドを脚本家に迎えた物語は、奇想天外なアイデアでMLBビジネスに風穴を開けた男を描くとともに、インド人初のMLB投手となったリンク・シン(スラージ・シャルマ)とディネシュ・パテル(マドゥル・ミッタル)の奇跡のようなアメリカン・ドリームを描いている。優勝賞金10万ドルを目指し、クリケット選手ではなく、陸上選手と運転手から立候補した未来のドル箱プレイヤーは規格外のパワーを見せつける。だがノー・コントロールを克服する過程が残念ながら今作には具体的に描かれていない。『フライトナイト/恐怖の夜』同様に隣家に引っ越して来たブレンダ・フェンウィック(レイク・ベル)とのロマンス、洗濯機が壊れてセキュリティに付けた彼女とのSkypeのやりとり。仕事が忙しいという理由で、未知の地へ降り立った2人を顧みないJBとインド人の軋轢、それを踏まえた上でのポポ・バヌアツのパーティ会場での主人公の暴走。主人公はスポーツ・ビジネスの破綻という恐怖を抱えながら、クライマックスには「楽しんで来い」と彼らに言い放つ。今作のクライマックスは、スポーツ・エンターテイメントのラストとしてはやや凡庸に見えるものの、ディズニー作品らしいラストが印象的である。だが残念ながらリンク・シンとディネシュ・パテルのその後はMLBで目覚ましい成果を上げていない。
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